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上関原発漁業補償 採決集会また中止 祝島 反対派が抗議

 中国電力上関原発(山口県上関町)建設計画に伴う漁業補償金をめぐり、山口県漁協本店(下関市)は4日、県漁協祝島支店(同町)分の補償金配分案を採決する同町祝島での組合員集会を中止した。原発反対派の住民たちが昨年8月同様、定期船で訪れた本店幹部に激しく抗議。本店側が会場入りを断念した。

 配分案を協議する集会の中止は4回目。過去3回とも、悪天候や反対派住民たちの抗議行動で延期となってきた。

 祝島支店は補償金約10億8千万円の受け取りを長年拒み続けてきたが、昨年2月の集会で一転、受け取りを決めていた。配分方法が決まらなければ本店は支払いの手続きに入れず、異例の事態が続くことになった。

 発着場には反対派住民たち約130人が集結。本店の仁保宜誠専務理事たち5人を乗せた定期船が到着すると「原発反対」「帰れ」などと叫び、集会の開催に抗議した。住民たちが殺到して危険な状態となり、本店側が集会の中止を決定。約20分後に島を船で退去した。

 「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の清水敏保代表(59)は「集会は認められないと事前に知らせている」と説明。仁保専務理事は「また延期になったのは残念。今後のことは白紙」と答えた。

 補償金拒否は反対運動の「柱」。清水代表たち組合員の一部は、本店が主導し、補償金の受け取りを無記名投票で決めた昨年2月の集会を「規約違反の決議」と主張している。(井上龍太郎、久行大輝)

上関原発計画に伴う漁業補償
 2000年4月、原発予定地周辺に漁業権を持つ8漁協の共同漁業権管理委員会などが、祝島漁協(現山口県漁協祝島支店)を除く7漁協の賛成で総額約125億円の漁業補償条件に同意。中国電力は同年5月と08年11月に分けて全額を支払った。祝島支店分の補償金約10億8千万円は現在、県漁協本店が管理している。

【解説】反対派に強い危機感

 上関原発計画に伴う山口県漁協祝島支店の漁業補償金配分案を採決するため計画された4日の組合員集会は、組合員を含む原発反対派の住民たちが開催に抗議し、またも中止となった。背景には、受け取りの手続きが進むことへの反対派住民の強い危機感がある。

 原発予定地の周辺に共同漁業権を持つ県漁協8支店で、祝島支店だけが補償金を拒否。祝島の住民にとってその姿勢は長年、反対運動のよりどころだった。「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の清水敏保代表は「補償金を受け取ることは原発を認めること」と言う。それだけに賛成多数で受領を決めた昨年2月の集会は、住民たちに大きな衝撃だった。

 祝島支店の恵比須利宏運営委員長(70)は「『原発はできない』との考えから受け取りを考える組合員が出始めた」と説明する。中国電力が準備工事を中断し丸3年。人口448人の祝島は高齢化率が74%に達する。支店の赤字を穴埋めする各組合員の負担は2013年度、18万円を超える見通しだ。一丸となって国策に抵抗し続けた住民の結束に、ほころびが見えているのは確かだ。

 清水代表たちは昨年2月の集会を「規約違反」とし、配分案の採決集会自体を認めない構えだ。今回も県漁協本店幹部を取り囲み、会場入りを断念させた。集会での議決を求める本店側と真っ向対立しており、開催は容易ではない。(井上龍太郎)

(2014年3月5日朝刊掲載)

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