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連載・特集

みんなでサミット <5> 花いっぱい運動

平和への思い込めて

 復興と平和を象徴する花で街を彩り、先進7カ国首脳会議(G7サミット)を歓迎する動きが広島市内で広がっている。原爆投下で壊滅し「75年は草木も生えぬ」ともいわれた広島。市民のさまざまな思いを乗せた花々が咲き誇る。

 4月下旬、平和記念公園(中区)南側の花壇で市シルバー人材センターの約20人がマリーゴールドの植え付けに汗を流していた。会員は70代が中心で被爆者もいる。山田利之さん(78)=西区=もその一人だ。

 「原爆で亡くなった人を思いながら一本一本、心を込めたい」。生後6カ月の時、東観音町(西区)の自宅で洗濯中の姉に背負われていて閃光(せんこう)を浴びた。今も背中にやけどの跡が残る。

 センターでは毎年、花壇を手入れし、今年は黄とオレンジ色の花で「G7」の文字を描く。山田さんはおもてなしの気持ちと同時にサミットに被爆地開催だからこその成果も望む。「今の街からは想像できない悲劇があった。同じ苦しみを味わう人が二度と出ないよう、G7首脳には原爆資料館をじっくり見てほしい」

 花壇近くには白やピンクのペチュニア1400株で「G7 HIROSHIMA」の文字を描いたモニュメントが登場した。県内の官民でつくる広島サミット県民会議の呼びかけに応じた市内27校の小学生が苗を育てた。中島小6年岡田莉人さん(12)は「特別な会議のために育てた花が飾られてうれしい」と喜ぶ。

 平和大通りでも満開の花で迎える準備が進む。通り沿いの花壇を管理するボランティア21団体はサミット期間中に見頃を迎えるように調整。NPO法人セトラひろしま(中区)は4月下旬に白やピンクのペンタスの苗を植えた。メンバーの尾崎恭子さん(72)は「広島は市民の力で原爆から復興し、緑豊かで花いっぱいの街になった。花で平和のメッセージを届けたい」と力を込める。  (余村泰樹)

(2023年5月6日朝刊掲載)

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