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連載・特集

みんなでサミット <3> 元宇品派出所

最前線 島くまなく巡回

 外周は約3キロ。1500人ほどが暮らす小さな島の道を、電動自転車で1時間以上かけてくまなく巡回するのが日課だ。「脇道や山道も知らない所はなくなりました」。広島南署地域課の河野貴史警部補(48)と前田紋菜巡査長(26)は、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の主会場がある広島市南区元宇品地区でパトロールを重ねる。

 県警は3月、「地域の安全安心のよりどころ」として島内に臨時派出所を開設した。着任したのが河野警部補と前田巡査長だ。ともに広島市出身。河野警部補は「サミットに関わりたいと願っていたが、まさかの最前線で驚いた」と振り返る。道路や崖地に異変はないか。不審物は―。巡回中は集中を切らさない。

 サミットでは島全体が厳重に警備され、住民の暮らしに制約や不便がつきまとう。本番を控え、県外から応援で駆け付けた警察官の姿も目立つようになった。

 家庭への巡回連絡も任される2人。「警察官ばかりで落ち着かない」とこぼす住民と出会った時、「皆さんの協力が欠かせない」と10分以上かけて丁寧に説明した。不安を少しでも和らげ、理解を求めることも大切な任務だ。

 着任から2カ月がたち、最近は巡回中に声をかけられることが増えた。落とし物を届けてくれる人も。前田巡査長は「派出所があることが浸透してきた。広島の平和への思いが発信される場を支えたい」と笑顔で語る。

 登下校中の小学生からの「頑張って」とのエールが原動力になる。「住民がささいな異変でも伝えてくれる関係性を築き、警備の成功に結び付けたい」と河野警部補。それは、子どもたちをはじめ住民の安全安心を守ることでもある。ペダルをこぐ足に力を込め、島を駆ける。(川村正治)

(2023年5月4日朝刊掲載)

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