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連載・特集

『生きて』  通訳・被爆者 小倉桂子さん(1937年~) <9> 平和のための活動  

市民団体と会社を設立

 欧州の反核市民運動に刺激を受け、最初にやったのが「平和ピクニック」でした。平和記念公園(広島市中区)の原爆慰霊碑前に集まって平和大通りを歩いて比治山(南区)へ登り、そこで話をしながらお弁当を食べる。平和を求める人なら国籍も所属も問わず誰でも、飛び入り参加も大歓迎です。

 外国人の友人にも声をかけ、必要なものはすべて手作りです。何をしているか一目で分かるよう白い布で横断幕を作り、幕を張るため洗濯ロープを持ち寄りました。活動を通じて仲間も増え、次は何をしようかと盛り上がりました。

 広島で長く親しまれた国際交流イベント「ぺあせろべ」もそこから生まれました。平和(peace)と愛(love)を組み合わせた造語です。あらゆる国の人たちと平和と愛を分かち合えないかとの思いで企画し、広島国際文化財団の協力を得て1984年、開催にこぎ着けました。

 そうした活動を楽しんでいましたが、忙しくて夜寝る時間もない。広島を訪れる外国人の案内を誰かと手分けできたらと考えていた時、新聞で「ヒロシマ案内人」を養成する講座を開くという記事を見つけました。すぐに受話器を握って「私に話をさせて」と主催者に電話し、会場で受講者に呼びかけました。

  ≪翌月約20人でスタートしたのが「平和のためのヒロシマ通訳者グループ(HIP)」。現在約200人の会員がおり、平和記念公園を英語でガイドする活動に取り組む≫
 活動を続けるうち、平和は日常の中から創る必要があると考え始めました。国際化が進む中、ビジネスでも社会貢献できないかと、今度は、国際関係コンサルタントを担う株式会社を設立しました。外国人の知恵も借り、出生から結婚、遺産相続まで国際的に生じる諸問題をサポートするほか、企業の海外進出や、留学の手続きなどに関する書類の翻訳や通訳といった、あらゆる業務を多言語で担う会社です。

 1年かけ、広島の暮らしや観光、平和関連の情報も盛り込んだ日英対訳のガイドブック「ヒロシマアテンションプリーズ」も発行しました。アジア競技大会(94年)を控え、多くの人に活用していただきました。

(2023年5月10日朝刊掲載)

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