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「黒い雨」巡回相談 本年度日程終了 健康不安 245人が訴え

 広島県と広島市は6日、原爆投下直後の「黒い雨」を浴びながら国の援護対象区域から外れた住民たちを対象とした巡回相談会を、安佐北区の安佐公民館で開き、本年度の日程を終えた。昨年10月から11回。計245人が、放射線被曝(ひばく)による健康被害の不安を訴えた。ただ被爆者のような医療面の援護策はなく、国の区域拡大を求める声は依然強い。

 安佐公民館ではこの日、保健師と医師、臨床心理士たち計7人が、20人の相談に応じた。

 飯室村(現安佐北区)で黒い雨を浴びたという同区の農業男性(76)は、6年前から喉頭や大腸にがんが相次ぎ見つかった。保健師に相談後、男性は「健康管理の助言はありがたいが、やっぱり黒い雨被害を認め、援護の範囲を広げてほしい」と求めた。

 県や広島市などは2010年、住民調査を基に、黒い雨被害の援護対象区域を約6倍に広げるよう国に要望。しかし、国は12年7月に「科学的合理的根拠がない」として拡大を見送り、「健康不安の軽減」を目的とする相談事業を設けた。

 国の委託を受けた県と広島市の巡回相談は安佐北、安佐南、安芸、佐伯の4区で開催。当初は7回を予定したが予約が多く4回追加した。14年度当初は月1回のペースで開き、予約状況を踏まえて増やすという。

 広島市と周辺2市5町の市役所や町役場に設けた常設の相談窓口にも6日までに計61人が訪れた。

 県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会の高野正明会長(75)=佐伯区=は「相談事業だけでは、被害者は救われない。援護対象区域の拡大を引き続き国に求める」と話している。(明知隼二)

(2014年3月7日朝刊掲載)

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