×

ニュース

東日本大震災から3年 福島被災 紙芝居で上演 仮設住宅で読み続けた男性追悼 

 福島第1原発がある福島県大熊町の出身者が22日、広島市中区の市まちづくり市民交流プラザで、被災体験をテーマにした紙芝居を無料上演する。東日本大震災から3年。被災者の現状や思いを知ってもらおうと、同市の市民グループ「まち物語制作委員会」が企画した。(有岡英俊)

 紙芝居は「悠稀くんの手紙」。主人公は同町の「自閉症児親の会スマイル」元代表の栃本正さん(2013年12月に61歳で死去)の三男翔太さん(18)をモデルにしている。

 自閉症のある翔太さんと家族たちを含めた住民が、原発事故直後に混乱した様子や、目に見えない放射線被害への不安を、悠稀くんたちを通して描いた。

 栃本さんが、12年3月以降、制作委から被災地へ届けた紙芝居22作品を仮設住宅で暮らす子どもやお年寄りに読み続けていたのが作品誕生の縁となった。

 イベントは栃本さんへの追悼の意味も込める。当日は栃本さんの妻春美さん(58)と翔太さん、長女横山和香子さん(38)が紙芝居を読む。春美さんは「古里を思い続けて紙芝居を上演した夫の遺志を継ぎたい」と意気込む。

 制作委は11年12月からほぼ毎月、現地を訪れている。被災者から地域の民話や避難体験を聞き取り、96作品を仕上げた。全て被災地に届け、各地で上演の輪が広がっている。

 同プラザで22日から4日間、メンバーの一人で、上演に関わる被災者を撮影している呉市の写真家坪島遊さん(53)の作品展を併せて開く。坪島さんは「3年たったいまだからこそ語れる悲しみや、前向きに生きようとしている人たちの表情を紹介する」と話している。

(2014年3月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ