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人に寄り添う 音楽の力 広響創立60周年 記念定演出演 五嶋みどりさんに聞く

故バーンスタインと訪れた広島

 今年で創立60周年の広島交響楽団が「記念プレミアム定期」と銘打つ第431回定期演奏会(18日、チケット完売)。ソリストとして、世界的バイオリニストの五嶋みどりさんが登場する。下野竜也・音楽総監督の指揮で、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲を披露する。本番への意気込みや、少女時代に米国を代表する指揮者の故バーンスタインと訪れた広島への思いを語ってもらった。(西村文)

  ―広響とは初協演になります。抱負をお聞かせください。
 初めて協演するオーケストラや指揮者からインスピレーションを受け、新たなアイデアが生まれる経験は大変刺激的です。演目に選んだバイオリン協奏曲は、ロマンチックなメロディーやエキサイティングなパッセージなど、チャイコフスキーらしさがたくさん感じられる名曲。子どもの頃から好きで、ずっと弾き続けてきました。今回、初めて広響と協演する機会にこの曲を弾けることをとても楽しみにしています。

  ―1985年にバーンスタインが企画した「広島平和コンサート」にソリストとして参加し、広島を訪れています。印象に残っていることは。
 とても暑い8月の数日を広島で過ごしました。ホテルの窓から見えた路面電車とパラソルを差して歩く人々―。なぜかその景色が脳裏に焼き付いています。平和コンサートのツアーはアテネ、広島、ブダペスト、ウィーンを巡り、ヨーロッパのユースオーケストラと協演しました。広島ではホールでのリハーサル中、スプリンクラーが誤作動し、バーンスタインと天井から水を浴びてしまいました。

  ―国連ピース・メッセンジャーをはじめ、社会貢献活動を30年余り続けています。「音楽の力」をどう捉えていますか。
 音楽というのは常に人に寄り添うものではないかと。人間というものは、さまざまな経験をしながら生きていく。人生にはもちろんいろいろなことが起こりますが、その人がどんなコンテクスト(状況)であっても、寄り添えるものが音楽なのではないかと思います。

    ◇

 演奏会はプログラム前半がチャイコフスキーのバイオリン協奏曲、後半がブルックナーの交響曲第1番。18日午後6時45分、広島市中区の広島文化学園HBGホールで開演。6時15分からプレイベントがある。当日券は販売しない。19日から広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)に伴う交通規制のため、広響事務局は早めの来場や移動手段の確認を呼びかけている。

ごとう・みどり
 1971年大阪府生まれ。11歳でニューヨーク・フィルと協演。米国を拠点に第一線で活躍を続ける。2007年、日本出身者で唯一の国連ピース・メッセンジャーに。米カーティス音楽院などで後進の指導にも当たる。

(2023年5月10日朝刊掲載)

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