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原爆詩人 家庭の顔 栗原貞子さん未発表作品発見

■記者 伊藤一亘

86編 内面つづる 広島女学院大小冊子刊行へ

 広島女学院大(広島市東区)は8日、昨年寄贈された原爆詩人・栗原貞子さん(1913~2005年)の資料から未発表詩86編が見つかった、と発表した。「生ましめんかな」を発表し、反核平和運動に取り組んだ社会派詩人として知られる栗原さん。発見された詩は、家族や自らの内面をつづる叙情的作品が多く、人間像を伝える貴重な資料となっている。

 未発表詩は創作ノート4冊から見つかった。60年代以降の作品をまとめたとみられ、万年筆の筆跡に推敲(すいこう)を重ねた様子がうかがえる。詩の頭に「未」の字を書いて丸で囲み、未発表と分かるようにした作品もあった。

 訪れた三瓶山(大田市)の感動を素直に描写したり、娘に「母さん思いのやさしい子」と語り掛け、母親の顔をのぞかせたり。平和運動に携わる中で、挫折しそうな気持ちを鼓舞する作品もあり、作家の心情が浮かぶ。

 ノートは昨年7月、長女の真理子さん(74)が肉筆原稿などとともに広島女学院大に寄贈。同大は図書館に「栗原貞子記念平和文庫」を開設し、交流が深かった詩人伊藤真理子さん(70)=東京都=らに資料調査を依頼し、発表の有無を検証していた。

 未発表詩について、栗原真理子さんは「母は優しかったからこそ原爆や戦争に素直に怒りをぶつけた。怒る詩人も優しい母も、どちらも本当の姿です」と感慨深げに話していた。

 同大は86編のうち41編を小冊子「生ましめんかな」にまとめ、10日に刊行する。小冊子はA5判、68ページで千部作製。希望者に送料自己負担で配布する。冊子の内容は10日以降、同大図書館のホームページでも見られる。図書館Tel082(228)0392。

(2009年7月9日朝刊掲載)

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