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丸木位里 初期のびょうぶ絵 広島の個人宅で発見 泉美術館 きょうから公開

 「原爆の図」で知られる広島市安佐北区出身の水墨画家・丸木位里(1901~95年)のびょうぶ絵が、広島市内の個人宅で見つかった。37年の初期作で、専門家は「位里の作風の変遷を知る上で貴重な作品」と評価する。10日から広島市西区の泉美術館の企画展で公開される。

 びょうぶ絵は縦約1・3メートル、横約2・6メートルの六曲一隻(せき)。野山の木々の風景を水墨で描いている。調査した泉美術館の永井明生学芸員によると、画面左下に「昭和丁丑(ひのとうし)年 位里」とあり、えとから制作年が明らかになった。永井学芸員は「ごく初期の作品で、制作年の分かる大作は珍しい」と言う。

 位里は当時、広島県内外の公募展で入選を重ね、画家として自立していく時期だった。37年に中国新聞社で個展を開いており、その「出展作の可能性もある」と永井学芸員。即興で墨の濃淡やにじみを生かしたような画風は「前衛の兆しが見え、後年の創作につながる」と指摘する。

 作品は所有者の父親の遺品の一つで、入手した時期や経緯は不明だ。泉美術館での展示は6月11日まで。(福田彩乃)

(2023年5月10日朝刊掲載)

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