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被爆地に失望の声広がる 佐村河内さん会見 「謝罪が感じられない」

 楽曲が別人の作品だった問題で佐村河内(さむらごうち)守さん(50)が謝罪会見した7日、出身地の広島市などでは、「被爆者への裏切り」「謝罪の気持ちが感じられない」など失意と憤りが広がった。

 佐村河内さんはこの日の会見で、自身の口から聴覚障害に該当しないことを明らかにした。広島県ろうあ連盟の大西章雄事務所長(67)は「障害者をばかにしている。償いの行動を取ってほしい」と強調。県難聴者・中途失聴者団体連合会の伊達元一郎副会長(60)は「難聴者が本当に聞こえないのかと疑われかねない」と不快感を示した。

 佐村河内さんは被爆2世。手掛けたとされてきた楽曲の中には、ヒロシマをテーマにした曲もある。県被団協の坪井直理事長(88)は「ごまかしでなく、真実を大切にするべきだった」。もう一つの県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(73)も「違うやり方があったのではないか。被爆者を含め広島を侮辱した」と突き放した。

 代表作とされた「交響曲第1番 HIROSHIMA」を演奏した広島交響楽団の井形健児事務局長(49)は、ヒロシマへの思いを込めたとの釈明に対し「自分で音符を書いていないのに」とあきれていた。

 市民の受け止めも冷ややかだ。中区の会社員宮崎純也さん(23)は「『両耳の聞こえない作曲家』とPRすることでブランドイメージを高めようとしたとしか思えない」。安佐南区の飲食店員山広孝司さん(53)は「会見を開くのが遅すぎる」。佐伯区の大学職員松岡真里奈さん(24)は「各自治体は、聴覚障害の認定を科学的にやってほしい」と注文した。

 一連の問題で佐村河内さんに対する市民賞を取り消した広島市の松井一実市長は中国新聞の取材に対し「記者会見を見ていない」などの理由でコメントしなかった。

被爆者の利用ない 一問一答

 7日に記者会見した佐村河内守さんとの一問一答は次の通り。

 ―偽装を続けてきた18年間、どういう思いで仕事をしてきましたか。
 テレビ局で大きく取り上げられ、自分が制御できない大きな存在になり恐怖を覚えていた。

 ―聴力の診断結果は「聴覚障害に該当しない」とあります。
 説明しにくいが、音はかすかに聞こえるものの、ゆがんで聞こえる。取材などでは手話通訳が必要だ。

 ―代作していた新垣(にいがき)隆さんは「ずっと聞こえていた」と指摘しています。
 全くのうそ。新垣さんを名誉毀損(きそん)で訴える。

 ―望みは有名になることだったのですか。
 自分が有名になるために人を利用しようという気持ちはなかった。

 ―広島の被爆者や市民は怒っていることを、どう受け止めていますか。
 私自身も被爆2世。申し訳なく、反省している。

 ―被爆者を利用しようと思っていたのでは。
 断じてない。

 ―報酬として新垣さんに支払った700万円前後という額は正しいのですか。
 覚えていないが、領収書は全部もらっている。

 ―印税収入は。
 詳しいことは申し上げられないが、ことし初めて黒字になった。新垣さんの報酬は、妻に「ご教示代」とうそをついて払ってもらっていた。

 ―代作は「2人だけの秘密」と言うが、知っている人は。
 誰も知らなかった。(自身の番組をつくった)テレビ局のディレクターや妻、手話通訳の人もそうだ。

(2014年3月8日朝刊掲載)

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