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広島の美術 国内外へ発信 G7サミットへ 県立美術館コレクション展

田中万吉や土屋幸夫 洋画充実 感想貼るボードで交流

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、広島市中区の広島県立美術館が、えりすぐりのコレクション展を開いている。「100の出会い、∞(無限)の対話」展。G7首脳の配偶者らの訪問先として注目度が高まる中、名品の魅力を国内外に発信し、地元の美術を総覧する場となっている。(福田彩乃)

 作家1人につき1点ずつをめどに、計約120点を紹介する。とりわけ充実しているのが、地元作家を軸とした日本洋画のコーナーだ。広島洋画界の黎明(れいめい)期をけん引した小林千古に始まり、「日本の印象派」と呼ばれる南薫造、近代洋画史に名を刻む靉光(あいみつ)らの逸品が集う。

 フランスで学び、帰国後に広島、東京で活躍した田中万吉の「サントロッぺの漁港」(1924~27年ごろ)は、鮮やかな色彩で南仏の情緒を伝える。溶けた皿や曲がったスプーンで構成する「果てしなき餐食(さんしょく)」(38年)は、尾道市出身の土屋幸夫の作。シュールレアリスムの影響が色濃い。広島の前衛美術をリードした山路商の自画像や、三次市を拠点に「機関士画家」と呼ばれた太田忠の山村風景も見応えがある。

 このほか日本にフォービスムを広めた里見勝蔵ら全国の作家の作品も並ぶ。藤崎綾主任学芸員は「時代とともに新たな表現が生まれ、作家ごとに自分らしさを追求していくさまを感じてほしい」と話す。

 彫刻分野では、広島ゆかりの作家の魅力を再発見できる。平和大橋などの欄干を設計したイサム・ノグチの抽象作品「追想」(44年)は、骨のような造形がさまざまな想像をかき立てる。平和記念公園そばの「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」で知られる芥川永(ひさし)は、「カンタトリス(遠くの声3)」(84年)。天を仰いで歌う女性をデフォルメし、朗らかな雰囲気をまとう。

 ダリの「ヴィーナスの夢」(39年)や円鍔勝三の「月夜の僧」(85年)といったおなじみの作品も勢ぞろい。竹原市に窯を構えた陶芸家今井政之さん(今年3月に92歳で死去)の追悼コーナーも設置した。5点を並べ、前衛の意匠が際立つ初期から代名詞の面象嵌(ぞうがん)に至るまで創作の変遷を伝える。

 海外の来場者に理解を深めてもらうため、主な解説パネルに英語を併記したほか、付箋で感想を貼り付けるボードも掲示している。英語や中国語の感想も目立ち、美術を介して多様な人々が感性を共有し合える空間となっている。

 展示は7月2日まで。前期(5月28日まで)と後期(同30日以降)で、一部の作品を入れ替える。

(2023年5月13日朝刊掲載)

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