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沖合移設 裏切りの増機 岩国訴訟 元市職員の山本さん 「艦載機が来て前よりやかましく」

 米軍岩国基地(岩国市)の周辺住民が航空機の騒音に対する損害賠償などを国に求めた第2次訴訟。2018年の空母艦載機移転で所属機が倍増したことに伴う被害について争う。10年に滑走路が1キロ沖合に移設され、騒音が減ると信じていた住民たちは、憤りの声を上げる。(黒川雅弘)

 「ゴォー」。基地に近い岩国市旭町の元市職員山本満治さん(85)方は戦闘機のジェット音がひっきりなしに鳴り響く。滑走路の西約2キロ。市内でも特に騒音被害のひどい「うるささ指数(W値)」85の区域で山本さんは50年以上暮らす。家屋全体が国の防音工事の助成対象。壁から天井、窓まで防音を施している。でも、電話や家族の会話が遮られる。「艦載機が来て前よりやかましくなった」と明かす。

 山本さんは滑走路の沖合移設に関わった。市の基地対策担当部長として1991年から何度も上京し、防衛省や自民党の関係者に移設の必要性を説いた。滑走路を市街地から遠ざけ、騒音や航空機事故の危険から市民を守りたい一心だった。「艦載機が来ると分かっていたら、沖合移設なんて求めなかった」

 山本さんの思いとは裏腹に、岩国基地は極東最大級の航空基地になった。米海兵隊・海軍の戦闘機が訓練を繰り返し、20年度からは空軍機の飛来も相次ぐ。市が市内5カ所で測定する騒音は、騒々しい街頭に相当する70デシベル以上が21年度に3万回を超え、沖合移設前の09年度に迫った。22年度も2万5千回を超え、高い水準が続く。

 艦載機の岩国移転を決めた国に山本さんは不信感を募らせ、1次訴訟から原告に加わる。将来分の騒音に対する賠償を求めたが、1次訴訟では認められなかった。全国各地の爆音訴訟の判決も一部を除き、将来分を認めていない。厚木基地(神奈川県)では5次訴訟まで進むなど、騒音被害の救済に向けて提訴を繰り返すしかないのが現状だ。「声を上げ続ける。国は住民の意見を尊重し、裁判を長引かせないでほしい」

(2023年5月13日朝刊掲載)

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