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次の役割探る 広島の学生 東日本大震災3年 ニーズ変化に対応 教訓持ち帰り還元も

 東日本大震災から11日で丸3年。広島県内の大学生たちはいまも現地を訪れたり、記憶を風化させまいと活動を続けたりしている。被災地のニーズが移り変わる中、次の役割を考え、教訓を広島に還元しようと模索している。(馬場洋太)

 「これ、髪の毛かな」。大津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市で2日、県立広島大2年の山口友理恵さん(20)が、土から出てきた糸状のものに目を光らせた。全国の学生を被災地に送る企画「きっかけバス」(助けあいジャパン主催)の県チーム40人を率いて、行方不明者の「手掛かり」を捜した。

 海辺の土を掘り返し、ふるいにかける。遺骨や手帳などを見つけ出す作業をひたすら繰り返す。髪の毛は警察にDNA鑑定を委ねる。同市の海辺ではかさ上げ工事が進み、遺留品を捜せる時間は残り少ない。

自分見詰め直す

 参加者の多くは2年生。「震災時は高校生で、来られなかった」「教員志望なので将来、生徒に語れるように被災地を見ておきたい」と動機はさまざまだ。

 山口さんは、原発について考える大学の授業で、被災地を深く考えてこなかった自分を見詰め直し、「きっかけバス」の県代表を買って出た。昨年末の下見を含め、これまでに被災地を2回訪問。「場所ごとに復興の進み方に差があった。現地で初めて知ることが多い」と感じる。

 被災地への関心を保ち続けるために、学生たちは活動に工夫を凝らす。広島大のボランティア団体「OPERATIONつながり」は毎月11日、学内で震災をテーマにワークショップを開催。毎回、会員以外も10人程度の参加がある。同大や広島国際大などは、優れた活動計画を提案したグループに旅費を補助し、活動を支えている。

 3年たつと仮設住宅から出る人も増え、近所付き合いが薄れていく。「つながり」メンバーの冨吉亘哉(のぶや)さん(20)は、宮城県で被災者と触れ合う中で「行き場のない人が孤立しないように、日常的に細かなケアが要る。活動に関心を持ってくれた地元の高校生にノウハウを引き継ぐことも必要かもしれない」と思案する。

若い発想に期待

 学生に期待するものはマンパワーだけではない。広島国際大生と交流がある福島県相馬市の復興支援センターMIRAI所長の押田一秀さん(32)は「原発事故後、農産物は福島産というだけで売れず、漁業もできない。自立に向け、どんな産業をつくり出せばいいのか、若い知恵や発想がもっと欲しい」と指摘する。

 被災地で見聞きした教訓を地元に帰って伝え、将来の災害に備えようとする取り組みもある。

 広島工業大の学生グループは、避難所で使うポータブルトイレを囲う強化段ボール製の防音壁を試作し6日、学内で披露した。昨年末、仙台市の仮設住宅を訪ね「音漏れを気にしてトイレを我慢し、ぼうこう炎になった人がいる」と聞いたからだ。

 建築工学専攻の技術を生かし、防音効果と組み立てやすさの両立を追求した。リーダーの星野友也さん(20)は「各地の町内会などでも取り組めるように、インターネット上で作り方を公開したい」と話す。

 きっかけバスに参加した山口さんは、陸前高田で聞いた「国を信じるんじゃなく、自分で判断して動かないと命は守れない」との言葉をかみしめる。「広島では巨大地震への警戒心が薄いのではないか」。公開の場や小中学校などで、被災地での体験も含めて防災について語るつもりだ。「きっかけをもらった人がバトンを渡せば、少しずつ次の一歩につながる」と信じて。

きっかけバス
 全国の大学生約2千人を47都道府県別のチームで岩手、宮城、福島の被災3県に派遣するバスツアー。視察や行方不明者の捜索などを通じ、復興や防災を考える人材を育てる。震災3年を前に、公益社団法人「助けあいジャパン」(東京)が2014年2、3月に開催。旅費や宿泊費は寄付で賄う。次回開催は未定。

(2014年3月10日朝刊掲載)

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