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あちこちの「平和の鐘」調査 広島の市民グループ 20ヵ所以上把握 書籍化へ

 広島の市民グループのメンバーたちが、原爆で壊滅した後の広島市内や周辺にある「平和」への思いが込められた鐘の場所や特徴を調べている。寺院や教会を訪ね歩き、これまでに20カ所以上を把握。来年春までに書籍にまとめ、市内の公立図書館や公民館への寄贈を目指す。

 旧市民球場跡地のひろしまゲートパーク(中区)に立つ「平和の鐘」を語り継ぐ「響け!平和の鐘実行委員会」の代表で、元市職員の高東博視さん(77)=佐伯区=たち7人が活動。焼け跡で拾い集められた金属を溶かして造られ、1949年の平和祭(現平和記念式典)で1度だけ鳴らされた鐘の歴史をひもとくうち「平和への思いが込められた鐘がほかにあるはず。一覧できる記録にしよう」と思い立った。

 高東さんが5年前から市内を中心に約130カ所の寺院を訪ね、住職への聞き取りを重ねてきた。実行委で広島市や周辺地域の寺院と教会計672施設にアンケート用紙を配布し、原爆犠牲者や戦没者への慰霊を込めた鐘のほか、海外との友好親善を象徴した鐘なども見つけた。

 多聞院(南区)には「NO MORE HIROSHIMA’S」と英文が記された鐘があり、今も副住職が毎朝8時15分に鳴らす。書籍には鐘の写真に大きさや製造日、製造の経緯といった情報のほか、その鐘にまつわるエピソードも書き添える。毎年8月6日の平和記念式典で鳴らされてきた歴代五つの鐘の歴史も紹介するという。

 焦土からの復興へと歩んだ市民の希望を、その音色で支えた鐘が少なくない。高東さんたちが大切にしている「平和の鐘」は、かつてひっそりとたたずんでいたが、3月のゲートパーク開業で多くの人の目に付くようになった。「忘れかけられている鐘もまだある。新たに光を当てることで、ヒロシマの心を後世に語り継ぎたい」(湯浅梨奈)

(2023年5月16日朝刊掲載)

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