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[ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 核不使用 迫る勇気を 前広島市長 秋葉忠利さん(80)=廿日市市

  ≪米タフツ大准教授や衆院議員を経て1999年に広島市長に就いた。3期12年の在任中、平和市長会議(現平和首長会議)の会長も兼ね、核兵器廃絶へ尽力。2010年に「アジアのノーベル賞」と称されるマグサイサイ賞を受けた。≫

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 広島は日本、世界に対して核戦争を起こさせない責任を負う。ウクライナの問題で、ロシアのプーチン大統領が核兵器を使うぞと脅したのは許せない。本当は広島から出ている岸田文雄首相がモスクワに乗り込み、「絶対に使ってはいけない」と、被爆者の気持ちを代弁するような劇的な行動が要る。

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、大きなステップを踏み出すのが大事だ。昨年11月、G7全首脳を含む20カ国・地域(G20)の「バリ首脳宣言」は「核兵器の使用と脅しは許されない」と記した。広島ではさらに、「核兵器の先制使用はしない」というのを世界の原則として採用すべきだ。

 先制使用がなければ、それ以外の使用もなく、使うぞという核抑止論は成り立たなくなる。岸田首相がG7で、ロシアもOKすれば核の先制使用をしないという合意を取り付け、モスクワでプーチン大統領を説得してはどうか。先制不使用を宣言し、信頼醸成が積み重なれば、ウクライナでの戦争の解決策もおそらく見える。第3次世界大戦を避けるため、あらゆることを試すのが大切だ。

 一方、広島で核抑止論を認めたという実績をつくらせてはいけない。広島で地元の首相が抑止論を肯定したら、広島が容認したと言われかねない。

 ロシアも参加し、08年に広島市であったG8下院議長会議(議長サミット)では、原爆資料館(中区)を案内した。元館長の高橋昭博さん(11年に80歳で死去)の被爆証言後、米国のペロシ議長はその手を握り「ビューティフル」という表現で賛辞を贈った。

 今回、岸田首相は自ら資料館を案内してほしい。その後、広島の代表として勇気をもって、ひと言「これで核兵器は使えなくなりましたよね」と首脳たちに念押ししてほしい。「いや使えます」と言い返せる人はいないはずだ。あの場所で首相に問いかけられた言葉にどう答えたか一生縛られる。あるいは十分発言できなかったと恥じる。それが広島という場の生かし方だ。(聞き手は岡田浩平)

(2023年5月17日朝刊掲載)

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