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[広島サミット5・19~21] 廃絶は国益 肌で感じて 長崎大核兵器廃絶研究センター・西田充教授に聞く

 19日から被爆地広島である先進7カ国首脳会議(G7サミット)を意義あるものとするために、どんな議論が求められるのか。長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の西田充教授(軍備管理・軍縮)に聞いた。(東海右佐衛門直柄)

  ―ウクライナ侵攻は世界の核情勢にどんな影響を与えたのでしょうか。
 「核兵器がなければ攻め込まれる」と考える国や人々が増えている。北朝鮮や中国などが核戦力を増やしているほか、非保有国であるイランやサウジアラビアも、核開発に動く可能性がある。日本でも一時、核共有の議論が出た。いま、世界は核軍縮から核軍拡への転換期にあるとみられ、強い危機感を抱いている。

  ―そういう時代の節目に被爆地でサミットが開かれることをどう感じますか。
 非常に重要だ。核兵器の使用を最終的に決断するのは首脳だ。核保有国とその「核の傘」にあるG7のトップがそろって原爆資料館を訪れ、遺品や遺影を目にすれば、一人の人間として核兵器がもたらす非人道的な結末が分かるはずだ。廃絶しなければならないと肌で感じてもらいたい。

  ―注目している点は。
 4月の長野県軽井沢町であったG7外相会合がまとめた共同声明は、原爆被害を「極めて甚大な非人間的な苦難」とし、「核兵器のない世界」を目指す点を明記した。広島サミットでは、実際に首脳たちが被爆地で実感したことがどのような表現で盛り込まれるか、岸田文雄首相がどう議論を主導するか注目している。

  ―どんな議論が求められますか。
 核兵器の使用は、現実的な危機だ。核抑止力は(指導者が合理的な判断ができない場合などに)理論通り機能しないリスクがある。プーチン大統領が侵攻を決めたこと自体、少なくともわれわれから見れば合理的な判断とは言えず、世界は核抑止力の不安定さが分かったはずだ。

 核兵器廃絶は、道義的な観点から必要ということだけでなく、西側諸国にとって最終的な国益になるという議論につなげてほしい。

 当面は核軍拡の時代に入るかもしれない。しかし、いずれ核軍縮が求められるときが再び来る。そのときにすぐ世界が軍縮へ動けるよう、G7は議論し、その基盤を維持してもらいたい。

  にしだ・みちる
 1972年福岡市生まれ。一橋大博士課程(法学)修了。外務省入省後、本省やワシントン、ジュネーブで軍縮・不拡散を担当。2021年から現職。

(2023年5月17日朝刊掲載)

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