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ウクライナ出身 茶道講師の願い 安佐北で指導続けるシルニツカさん 「和敬の心で和平探って」

 ウクライナで茶道講師を務めてきたオリガ・シルニツカさん(48)が、広島市安佐北区で日本人への指導を続けている。ロシアによる侵攻後は弟子や家族の日本への避難に尽力。19~21日に開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、「茶道の精神に立てば争いは起きない。平和への道を探ってほしい」と期待を込める。(加納優)

 ウクライナ南部のオデッサ出身。ロシアの大学に留学していた1993年、茶道裏千家がモスクワに派遣した日本人講師の所作を見て「全身に雷が走るような感銘を受けた」。以後は定期的に来日もして学びを深め、2005年に首都キーウで茶道教室を開講。「宗知(そうち)」の茶名で、100人以上に教えてきた。

 16年、日本人男性との結婚を機に広島市安佐北区可部へ移住。以後も頻繁だった母国との往来は、新型コロナウイルス禍とロシアの侵攻で閉ざされた。「自分のできることをやる」と、昨春には弟子の女性とその息子を関東に避難させるために奔走。同秋には、キーウで1人暮らしする母を広島の自宅に迎え入れた。

 サミット参加国の首脳に贈りたいのは、茶道の「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の精神だと流ちょうな日本語で語る。「茶の前に国境も国籍もない。心と心で対話し、敬い合えば争いは止まるはず」。母国で再び、お点前を披露する日を待つ。

(2023年5月17日朝刊掲載)

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