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ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 分断でなく 緊張緩和を 元広島市長 平岡敬さん(95)=広島市西区

  ≪中国新聞記者や中国放送社長を経て、1991年から広島市長を2期8年務めた。市長在任時の95年、核兵器の使用と威嚇の違法性を審理していた国際司法裁判所(ICJ)での陳述に臨み、被爆者の体験に触れて「国際法に違反するのは明らか」と訴えた。≫

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 広島は、戦争反対を言い続けてきた。そこで先進7カ国首脳会議(G7サミット)を開く以上、緊張緩和のための具体的な道筋を論議してもらいたい。分断を促進するような、あるいは戦争を奨励するような会議にはしてほしくない。

 ウクライナの問題は「直ちに戦争をやめるんだ」と言うべきだ。人間の命を大事にしようというのが広島の立場。停戦の方向へ具体的な話をしてほしい。米国は対中包囲網をつくろうとしているが、緊張関係、戦争の種を外交力でなくすためにどうすればいいのかを考えることこそ必要だ。

 核兵器による惨禍を受けた広島は、核に頼っていては駄目なんだ、と訴えてきた。使われたら、人類の破滅につながる。なくしていくには話し合いと交渉で緊張関係をほぐしていくことが欠かせない。武力ではなく相互理解を促進することで平和を保つべきだ。

 首脳が広島で被爆者に会ったり、原爆資料館を見たりすれば、核兵器の惨劇が分かるはずだ。米国は、広島・長崎への原爆投下について「あの作戦は間違っていた」と言うべきだ。正しかったとする限り、ロシアに核を使う口実を与えてしまう。使わせないためには「米国は間違っていた。だからロシアも間違うな」と言わないといけない。

 核時代、地球上にはヒバクシャがどんどん増えた。サミットには核実験をしてきた米英仏が参加する。広島から、世界のヒバクシャを救援する基金を国連につくる具体的な提案をしてはどうだろう。核兵器禁止条約の6条には核被害者への援助が定められている。

 一方で、もしも今回のサミットで戦争激化や分断を促進するようなアピールが出たら、今後広島が世界に平和を訴えても信用されなくなる。国の立場を乗り越えて、人類の平和のために力を尽くしたいというのが広島の原点だ。そうした思いを胸におさめて、平和への道を開く会議であるべきだ。(編集委員・水川恭輔)

(2023年5月18日朝刊掲載)

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