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小頭症患者母 川下さん死去 「きのこ会」進む老い 国の支援拡充が不可欠 広島

 原爆小頭症患者の川下ヒロエさん(67)=広島市東区=の母兼子さんが9日に92歳で亡くなり、患者や家族、支援者でつくる「きのこ会」が把握する患者の親はいなくなった。患者本人も、支えるきょうだいたちも老いが進み、暮らしの不安は尽きない。

 10日に市内であった葬儀には家族や支援者たち12人が参列。喪主を務めたヒロエさんは「1人でも生きていけるよう(料理や洗濯など)生活の面で厳しく育ててくれた」。支援者と書いた原稿を読み上げ、涙ぐんだ。

 小頭症患者は母親の胎内で被爆した影響で、生まれつき知的、身体障害がある。国が認定し、手当も支給されるが、同会の長岡義夫会長(64)=安佐南区=は「援護策があっても、支える人がいなければ生活していくのは難しい」と指摘する。

 広島市は2011年4月、国の補助を受け小頭症患者専任の医療ソーシャルワーカー1人を市役所に置いた。日頃の通院の付き添いや成年後見人の手続きをする。ただ、患者20人のうち市内に住むのは10人。県内の他の市町や県外に住む残る10人には支援が行き届かない。長岡会長は「どこに住んでいても普段から寄り添う人が必要」として国の支援拡充を求めている。(明知隼二)

死亡 きのこ会最後の親 川下兼子さん

 (かわしも・かねこ=きのこ会会員)9日、肺炎のため広島市中区の病院で死去、92歳。萩市出身。自宅は広島市東区(以下は非公表)。葬儀は近親者たちで10日に済ませた。喪主は長女のヒロエさん。

 原爆小頭症患者や家族、支援者でつくる「きのこ会」が把握する患者の親でただ一人健在だった。1945年8月6日、広瀬北町(現中区)の自宅でヒロエさんを妊娠中に被爆、46年4月に出産した。

(2014年3月11日朝刊掲載)

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