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インド首相 核実験後初の広島訪問 「意義深い」関係者歓迎

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ、核兵器保有国インドのモディ首相が広島市を訪れる。同国が1974年に初の核実験に踏み切って以降、現職トップとして初の広島訪問となる。日本政府は原爆資料館(中区)の視察を組み込む方針で、広島在住のインド出身者からは「意義深い訪問になる」と歓迎の声が上がっている。

 「首相は被爆者の声も聴いてほしい」。インド南部出身で、日印交流を進める市民団体を主宰するジョーセフ・ジェームスさん(66)=東広島市=は期待する。「核兵器が人類にどれほど被害をもたらすか知り、G7と共に何をしていけるか議論する場になるといい」

 インドは74年、国境を巡り対立してきた中国が先んじて核兵器を持ったことなどから核実験を実施。「平和利用」を主張したが、事実上、世界6番目の核保有国となった。核拡散防止条約(NPT)には、米ロ英仏中の5カ国のみに保有を認める不平等性を理由に加盟していない。

 隣国パキスタンもインドに対抗し、核開発を加速。両国は98年、相次ぎ地下核実験を断行した。インドは後に核実験一時停止や「先制不使用」を打ち出すが、96年に国連で採択された包括的核実験禁止条約(CTBT)には、パキスタンとそろって署名していない。

 インドはかつて大国の核武装や核実験を批判していた。初代首相ネール氏は57年、平和記念公園(中区)を訪問。原爆慰霊碑に花を手向け、詰めかけた市民を前に演説した。

 「われわれは一つの回答を求められている。再び原水爆を悪用して人類を破滅させるか、愛と仏の教え、慈悲の精神によって世界をつくるか(略)私は『ヒロシマを学べ』と世界に訴える」

 そのネール氏以来となるインドの現職首相の広島訪問。広島大大学院のインド人研究生デサルダ・クナルさん(22)=東広島市=は「兵器としての核はなくすべきだ。首相たちが広島で核被害について認識を改め、議論を正しい方向に進めるステップになれば」と望んだ。(田中美千子)

(2023年5月18日朝刊掲載)

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