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震災3年に被災地思う 山口県宇部の避難者・古和田さん/下松高美術部写真班の2人

 東日本大震災と福島第1原発事故から、11日で3年を迎える。山口県内への避難者は2月13日現在、148人。家族がばらばらの二重生活の長期化を余儀なくされながら、古里への帰還をためらう避難者がいる。一方、県内から被災地を訪ね、現地のいまに自分たちの思いを重ねて記録しようとする若者がいる。(桑田勇樹)

福島から避難 宇部の古和田さん

政府支援 具体化を

 「まだ帰れない」。福島第1原発関連のニュースに触れるたび、宇部市の学校支援員古和田扶美さん(49)は思う。市民団体の招きで2011年11月、福島市から子ども2人を連れて避難した。銀行員の夫(50)は「地元のために働きたい」ととどまり、二重生活が2年半近く続く。

 自宅は原発から約60キロ。放射線の影響を恐れ自主避難した。当初は2年程度のつもりだったが、汚染水漏えいなどのトラブルに、帰郷する気持ちをそがれた。中学3年の長男(15)、1年の次男(13)も周囲になじんだ。

 福島に戻るのは年に1回だけ。「公園で遊ぶ子どもはいまも見掛けない。復興なんてとても言える状況じゃない」と感じる。原発事故を受け、子ども・被災者支援法が12年6月に成立しても、被災者支援の具体化が進まないのも気掛かりだ。

 半面、全国の原発で新規制基準に沿った安全性に関する審査が進み、再稼働が近づきつつある。「あれだけの事故の影響が、もう忘れられつつあると感じる。被災者が本当に求めている施策は何か、政府は丁寧に聞いてほしい」

復興の兆し 撮影したい

下松高の2人 25日から釜石へ

 下松高(下松市若宮町)の美術部写真班の2人が25~27日、東日本大震災で津波に襲われた岩手県釜石市を訪ねる。「カメラを向けてもいいのかな」「笑顔の瞬間を一人でも撮りたい」―。不安もあるが、被災地のいまを切り取るつもりだ。

 2年近藤冴夏さん(17)は「写真を見た人が被災地に思いをはせるきっかけになれば」と、海岸線を撮る。「津波で家族を亡くした人も多い。失礼にならない撮影方法を考えたい」。1年高田晴奈さん(16)は「復興の兆しが分かる一枚を」と意気込む。

 写真班は震災直後から、被災者を励ますメッセージを掲げる人たちのスナップを、全国の高校が寄せ合う活動を続けてきた。送り出す部長の2年林愛美さん(17)は「被災地の実情を聞き、作品の展示会もしたい」と話している。

(2014年3月11日朝刊掲載)

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