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「原爆の結果想像を」 ブラジル大統領も初訪問 現地の被爆者期待の声

 広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、ブラジルのルラ大統領も現職として初めて被爆地に立つ。長く援護の枠外に置かれた在ブラジルの被爆者は「目の前で被爆者の証言を聞き、その表情から原爆のもたらす結果を想像してほしい」と訴えている。

 「ブラジルにも被爆者がいると知ってほしい」。解散したブラジル被爆者平和協会の理事だった渡辺淳子さん(80)=サンパウロ=は望む。2歳の時に広島で被爆。自身が「黒い雨」を浴びた事実を知ったのは38歳になってからで、差別を恐れた両親が伝えていなかったという。

 平和協会は1984年、在ブラジル原爆被爆者協会として発足。南米の被爆者を支援し、被爆者援護法の枠外に置かれた在外被爆者の実情を訴えてきた。ただ、援護の充実や高齢化を背景に2020年末で活動を終えた。厚生労働省によると、08、10年に最大162人いた在ブラジル被爆者は、22年に76人(3月末時点)まで減ったという。

 平和記念公園そばの本川沿いには、協会などが市に贈った「平和の碑」がある。公園を訪れる大統領に碑への立ち寄りを望む渡辺さん。ブラジルは核兵器禁止条約に署名したが、批准手続きが進んでおらず「広島に行った証しを行動で示してほしい」と期待した。(宮野史康)

(2023年5月18日朝刊掲載)

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