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連載・特集

ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 核兵器を脅しに使う独裁者 母国にも ベラルーシ出身の通訳 ナジェーヤ・ムツキフさん(42)=広島市安佐北区

 ≪「欧州最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領への抗議に広島から参加している。母国と同盟関係にあるロシアがウクライナに侵攻すると、原爆ドームの前で、広島在住のウクライナ人たちと戦争反対を訴えた。1986年4月の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、首都ミンスクで黄みがかった、泡の水たまりを見たと証言。今も甲状腺の不調を抱える。≫

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 プーチン大統領は3月、突然ベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明しました。発言は国民向けの演説ではなく、テレビのインタビューから飛び出した。ベラルーシの意見も聞かず、すでに決まっているかのように発表し、まるで植民地のような扱いです。

 ベラルーシ人は旧ソ連のチェルノブイリ原発事故でつらい経験をしています。核兵器の配備で再び、核の危険にさらされる。攻撃する側から見れば、ロシアよりハードルが低く、先制攻撃のターゲットになる。900万人の国民の命と安全が直接脅かされ、許せません。

 ルカシェンコ政権の独裁については長く諦めていました。でも、2020年の大統領選の不正を訴える抗議デモへの武力弾圧は許せなかった。平和的なデモ参加者にゴム弾を撃ち、拘束して痛めつけた。私の知人も拷問された。日本に住むベラルーシ人の会に加わり、デモなどで政権に抵抗しています。21年の東京五輪では、コーチに意見を言って強制帰国を命じられたベラルーシの選手の亡命を手伝いました。

 ロシアのウクライナ侵攻後の22年3月には、原爆ドーム前で抗議しました。プーチン大統領を支えるルカシェンコ大統領とベラルーシの市民は違うと伝えたかった。ウクライナの首都キーウに向かうロシア軍はベラルーシを通る。ルカシェンコ大統領を止めないと戦争は終わりません。

 2人の独裁者は核兵器で世界を脅しています。テロリストのやり方です。核兵器は独裁者の武器になっている。核兵器に基づく安全保障は私たちを安全にしていないとロシアの侵攻が明らかにしたのです。G7サミットで広島に来る首脳たちは、いま世界で最も大切な、核兵器に頼らない安全保障について話し合うべきです。(聞き手は宮野史康)

(2023年5月19日朝刊掲載)

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