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連載・特集

ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 平和は本当に大切 戦争を終わらせたい ウクライナ人通訳 ジガルコ・ヴィタリーさん(36)=ウクライナ

 ≪ウクライナで日本語通訳や取材コーディネート業をしている。2011年に美術展の仕事で広島市を訪れたほか、生年がチェルノブイリ原発事故の年であることから、核問題にも深い関心を寄せる。首都キーウ(キエフ)のあるキーウ州の街、マカリウ在住。22年2~3月、ロシア軍の侵攻で近隣のブチャとともに戦闘地域となった。≫

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 家族でマカリウに住んでいますが、時々キーウに行きます。マカリウの子育てや教育の施設はロシア軍の砲撃で壊れてしまったので。ウクライナでは9月から新学期ですが、4歳の息子は幼稚園に行けるかどうか。7歳の娘はどの小学校へ入ればいいでしょう。マカリウで学校はあまり動いていません。

 日本の方々は平和な国に住んでいますが、その平和を、本当に大切にしてください。この世の生活はいつまで続くか、(ウクライナでは)全然分からない。私は、家族と一緒に過ごす時間をとても大切にしています。毎瞬間を大切にしています。ロシアはミサイルを発射したり、ドローンで攻撃したりする。あした起きるかも分からない。

 われわれはもう1年以上こうした状況下に住んでいますので、今一番願っているのは、平和と…勝利ですよ。勝利がないと、たぶん私の息子も、大人になったらまた戦争するはずです。だから、このロシアとの関係はなんとか解決したい。私たちの子どもが将来、また戦争をしなくて済むよう願っています。

 私は1986年6月28日に生まれましたが、同じ年の4月26日、チェルノブイリ原発事故が起きました。母は医者から「出産しない方がいいんじゃないか」と言われたそうです。チェルノブイリの取材をコーディネートする機会も多く、放射能、核兵器の怖さを実感します。

 広島で原爆ドーム(広島市中区)の前に立ったことがあります。もしまた核兵器を使ったら、同じような建物がいっぱいになり、いっぱい人が亡くなってしまう。世界のリーダーは力を合わせ、とりあえずウクライナでの戦争を終わらせ、将来にわたり核兵器を使わないよう対策しなければならないと思います。(聞き手は編集委員・道面雅量)

(2023年5月19日朝刊掲載)

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