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核の脅威 許さぬ議論を ウクライナから東広島に避難 レペシュコ・アリーナさん

 ロシアに侵攻されたウクライナから東広島市に避難しているレペシュコ・アリーナさん(33)は毎日、祈るような気持ちで古里のわが家に電話をかける。「両親は今日も無事でした。でも明日はどうなるか」。母国が核兵器に脅される今、広島市で19日に始まる先進7カ国首脳会議(G7サミット)へ、「核の脅威を許さぬよう知恵を絞ってほしい」と願う。

 レペシュコさんはウクライナ中東部の出身。幼い頃からバレエを習い、大学卒業後は中国や韓国のテーマパークでダンサーとして働いていた。新型コロナウイルス禍で帰国。実家で過ごしていた昨年2月24日、ロシアの攻撃は始まった。

 「信じられなかった」。罪もない市民が殺傷されていく。ダンス仲間も犠牲となった。両親に出国を促され、単身来日したのは昨年4月。知人のつてで翌月、東広島市で暮らし始めた。

 当初は不安と孤独にさいなまれたが、支援者とつながり、今年4月には「母国の戦後復興に役立つ知識を得たい」と広島大大学院のスマートソサイエティ実践科学研究院へ入学。充実した日々に「日本の皆さんには感謝しかない」と言う。

 ただ不安は消えない。古里の化学工場が攻撃されて爆発が起きたとの報道に、先日も震えたばかり。有害物質による汚染の懸念が消えるまで、両親は水も飲めなかったという。「あまりに危険な攻撃。プーチンは正気を失っている。核兵器だって使いかねない」

 4年ほど前、広島を旅した際に原爆資料館(広島市中区)で目にした無残な写真の数々は、今でも忘れられないという。「敵意ある隣人が核を握っているのだから誰も安心できない。原爆の惨禍を知る日本にこそ平和に向けた議論をリードしてほしい」。母国のゼレンスキー大統領もオンライン参加する広島サミットの行方を見守る。(編集委員・田中美千子)

(2023年5月19日朝刊掲載)

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