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大国主導の構図に批判 サミット機に広島で「つどい」 多様な論点で根本的異議 高まる市民の発信力映す

 1975年の第1回以来、半世紀近い歴史を刻む先進国首脳会議(サミット)は、それぞれの開催地で歓迎とともに抗議活動にも直面してきた。とりわけ冷戦終結以降、グローバル(地球大)な課題を大国のリーダーシップで「解決」しようとする構図自体に疑問を投じ、批判する動きが目立つという。先進7カ国(G7)サミットを迎える広島でも、そうした視点での論議は続いている。

 広島市中区で13日にあった実行委員会主催の「G7広島サミットを問う市民のつどい」はその一つ。司会者は冒頭で、G7に米国や英国、フランスが含まれることなどを踏まえ「核保有国に広島へ来る資格はない」と端的に述べた。

 「サミットはなぜいらないのか」の題で報告に立った富山大名誉教授の小倉利丸さんは「サミットは、それぞれの政権維持を目的とする参加国の『情報戦』の場。声明の美辞麗句を真に受けず、検証する姿勢が欠かせない」と訴えた。元那覇市議の高里鈴代さんは、日本では初めて東京以外での開催となったG8沖縄サミット(2000年)時の経験に触れ、「当時のクリントン米大統領の決意表明に反し、在沖米軍の基地機能は強化されている。サミットはリップサービスの舞台になった」と指摘した。

 「自然界と人類の持続可能な共存には浪費型文明を見直し、社会変革を進めるしかない。しかし、生物多様性条約を批准しない米国をはじめ、G7にその視点はない」と批判したのは、瀬戸内海の環境問題にも詳しいNPO法人ピースデポ代表の湯浅一郎さん。核廃絶に寄与し得るのかを軸に、さまざまな論点でサミットへの根本的な異議が表明された。

 近年のサミット抗議活動の動向を編著書「サミット・プロテスト」にまとめた中央大の野宮大志郎教授は、サミット直前の広島を訪れ、この「つどい」を含む幾つかの集会をはしごした。「国家とは別のロジックで動く市民が、論点や代案を提示する力量を高めている。各国の取り組みを辛辣(しんらつ)に『格付け』するといった活動も国際会議への反応として一般化した。この流れが弱まることはないだろう」とみる。

 「サミットを受け入れる人、利用する人、疑問を呈する人、反対する人―。さまざまな立場からの発信がときに交錯しながら、問題の解決へ言論空間を成熟させることに期待したい」と話した。(道面雅量)

(2023年5月19日朝刊掲載)

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