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脱原発 議論深まらず 島根県議会 条例案否決 請求側、不満相次ぐ

 再生可能エネルギーの生産を伸ばし、全ての消費エネルギーを賄おう―。中国電力島根原子力発電所の地元市民団体がこう呼び掛けた条例案が11日、島根県議会で否決された。請求側からは「県と議会に理想を追求する姿勢がなかった」などと、脱原発に向けた議論が深まりを欠いたことへの不満の声が相次いだ。

 この日の県議会本会議場。傍聴者約70人が見守る中、県内有権者8万3323人が賛同した条例案は賛成少数で否決された。署名を集めた同市の無職芦原正文さん(64)は「現実を乗り越えようという県と議会の思いが感じられなかった」と憤った。

 請求団体「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」は昨年2月に条例制定の構想を表明。県内8支部を設け、エネルギー自給が進む先進地の研究を重ねるなど脱原発の道筋を探ってきた。代表の北川泉島根大元学長(82)は否決後の会見で「国任せでなく、県が自ら考え国に要望する姿勢がほしかった」と強調した。

 条例制定が請求された2月7日以降、請求側と否定的な県側との会談は、消費を賄う再生エネルギー生産量が何倍必要かとの議論に大半が割かれた。請求側は、中・大規模の水力発電所が含まれておらず省エネの試算もないとして、県が主張する「40倍」を「5・4倍」に改めるよう求めたが、拒まれた。

 「資料が誤っていたことで本来重要な脱原発をどう進めればよいか、中身の議論が全くできなかったことが一番残念」。条例案作成に関わった島根大法文学部の上園昌武教授(44)=環境経済論=は悔やむ。連絡会は当面存続し、4月13日に予定する総会で今後の活動方針を決めるという。(樋口浩二)

(2014年3月12日朝刊掲載)

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