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被爆者 G7首脳と面会 「核なき世界へ一歩を」 あの日8歳の小倉さん

 被爆者の小倉桂子さん(85)=広島市中区=は19日、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に参加している首脳と配偶者と、原爆資料館(中区)で面会した。英語で被爆体験を語り、核兵器のもたらす恐怖について伝えた。(森田裕美、宮野史康)

 8歳の時、爆心地から約2・4キロの広島市牛田町(現東区)の自宅そばで被爆した小倉さん。館内の展示物の前で、閃光(せんこう)に包まれ爆風で吹き飛ばされた体験や、大やけどの負傷者が逃げてきた様子などを語った。「幼い私が見た原爆を追体験してもらい、核兵器にリアリティーを感じてもらいたかった」

 また放射能という核兵器の特殊性や非人道性を伝えるため、被爆時には無傷だった人がしばらくして次々亡くなった状況や、2歳で被爆し10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんと折り鶴のエピソードも紹介した。首脳たちは小倉さんに握手を求め、熱心に耳を傾けたという。

 小倉さんは戦後、つらい体験を封印したまま、原爆資料館長などを務めた小倉馨氏と結婚。1979年に死別後、英語でヒロシマを案内する活動や通訳の仕事を始めた。被爆60年を迎えた頃、請われて自身の体験を人前で語るようになった。現在は海外の人たちに被爆証言を続けている。

 この日は核兵器保有国や依存国の首脳たちを前に、「被爆者は核兵器のない世界を見たいと願ってきたが、いまだに実現していない」と切ない思いも正直に伝えたという。「広島でじかに触れ感じたことを胸に、核なき世界への一歩を踏み出してほしい」と力を込めた。

(2023年5月20日朝刊掲載)

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