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[高瀬教授のサミットリポート] サプライズゲスト 異例

 初日(19日)冒頭に、広島サミットを象徴する行事をこれほど盛り込み、「核兵器と平和」を軸とする議論に一日の大半を費やしたことに、岸田文雄首相の強い信念を感じました。

 ドームを背に9人がそろう写真撮影も実現。胸が震えました。この一枚を世界のメディアがどう報じていくのか。そこに着目して情報収集を始めています。

 午後に飛び込んできたニュースには驚きました。ウクライナのゼレンスキー大統領の来訪です。サプライズゲストなんて過去に例がありません。

 昨年のドイツ・エルマウサミットではオンライン参加でした。わざわざ訪れ、対面することに大きな意義があります。テーブルを囲むことで共有される感情や一体感はオンラインの比ではありません。

 私の周囲では「G7はゼレンスキーを手ぶらでは帰せなくなった」と指摘する声が聞かれました。

 19日夕方に公表された首脳声明によると、ロシア産ダイヤモンドの取引を制限し、ウクライナへのさらなる財政支援を約束するなど、すでに踏み込んだ内容となっています。ゼレンスキー大統領の参加によって、拡大する可能性が出てきました。

 大統領は、招待国との接点をつくろうとしているのではないかとも思います。例えばインドやインドネシアは「グローバルサウス」と呼ばれる新興国で、対ロシア関係では中立の立場を取っているからです。

 G7を舞台に、その関係性に変化が生まれたら―。国際情勢の先行きは大きく変わりそうです。開幕早々、このサミットへの世界の注目度は増すばかりです。(聞き手は奥田美奈子)

(2023年5月20日朝刊掲載)

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