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平和な世 育む種まきに 苗木育てた樹木医・堀口さん見守る 首脳ら被爆桜「2世」植樹

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)で広島市を訪れた首脳たちが19日、被爆桜の「2世」の苗木を中区の平和記念公園内に植樹した。苗木を育てたのは、樹木医の堀口力さん(78)=西区。「鎮魂の場に被爆樹木を植えることは大きなメッセージになる」。平和な世界を育む「種まき」になることを願った。

 苗木は、爆心地から約1キロの市役所本庁舎の敷地で被爆したソメイヨシノの2世。堀口さんは5年ほど前に市から枝を譲り受け、接ぎ木して自宅で育てた。昨年初めて花を咲かせ、今では高さ1・2メートルほどに成長した。

 「木々を植えることは平和を取り戻すこと」と語る堀口さん。市内各地で桜やイチョウ、クロガネモチなどの被爆樹木の治療に当たる傍ら、苗木の育成に取り組んできた。昨秋、関係者から植樹への協力の打診を受け、花見で人々が集う平和なイメージから桜に決まったという。

 この日、特別に公園内に招かれ、岸田文雄首相たち各国首脳がスコップで苗木に土をかける様子を見守った。「世界的にも特異な存在の被爆樹木は平和の伝承者。いつかこんな役割を担うと思っていたことが現実になった。関われたのは光栄なこと」

 一面焼け野原と化した広島は、緑豊かな美しい街に復興を遂げた。「二度と核兵器が使われることなく、緑あふれる世界を一致団結して守ってほしい」。堀口さんは各国のリーダーに思いを託した。(頼金育美)

(2023年5月20日朝刊掲載)

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