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被爆者ら落胆・不満 核兵器禁止条約 言及なし 広島ビジョン

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)で核軍縮に関する「広島ビジョン」が19日に発表されたのを受け、被爆者や市民団体からは20日、落胆の声が相次いだ。被爆地から「核兵器なき世界」を目指す宣言としての物足りなさを指摘する意見が目立った。(和多正憲、小林可奈)

 ビジョンでは、ロシアを名指しし、核兵器の使用や威嚇を許さないというG7の立場を改めて表明した。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(81)=同県北広島町=は「ロシアの『核の脅し』も問題だが、ますます世界を分断させることにならないか」と懸念した。4月のG7外相会合での共同声明に続き、核抑止を事実上肯定した点は「核兵器があるから世界は安全という考え方で全く賛成できない」と突き放した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(78)=広島市西区=も「広島から核抑止力を肯定する宣言を発表する姿勢は理解できない」と強調。非保有国の間で署名・批准が広がる核兵器禁止条約にも一切言及しておらず「G7首脳は、はなから議論のテーマに上げる気がないのだろう。納得できない」と訴えた。

 「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)メンバーの瀬戸麻由さん(31)=呉市=は「とても不十分に思える。原爆資料館で被爆者と対話したのに、発表された文書がこれかと落胆している。禁止条約や世界の核被害者の視点も抜け落ちている」と口調を強めた。

 日本語と英語で証言活動をする被爆者の八幡照子さん(85)=同県府中町=は「ビジョンで若者が関与することの重要性に触れた点は歓迎したい」としつつ、「核兵器は廃絶しかないという思いがG7首脳から伝わってこないのは悲しい」と受け止めた。

(2023年5月21日朝刊掲載)

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