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戦時下トップ 電撃訪問 ゼレンスキー氏広島入り 厳戒の街 さらに緊張

 戦火と核兵器の威嚇にさらされるウクライナのリーダーが、被爆地広島に足を踏み入れた。ゼレンスキー大統領は20日、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に対面出席するために広島入り。厳重な警戒態勢が続く街中の緊張はさらに高まる一方、ウクライナゆかりの市民たちからは「歴史的な瞬間だ」と行動力をたたえる声が相次いだ。

 午後3時半ごろ、ゼレンスキー氏を乗せたフランス政府専用機が広島空港(三原市)に着陸。カーキ色のパーカで姿を現すと、小走りでタラップを下りた。

 攻め込んできたロシアのプーチン大統領は広島、長崎以来となる核兵器使用もちらつかせる。母がウクライナ人という広島市佐伯区の小学5年常重玲雄(れお)さん(10)は広島空港を訪れ「戦争を終わらせロシアが核を使うことのないよう、岸田文雄首相たちとしっかり話し合ってほしい」。

 サミット主会場のグランドプリンスホテル広島(南区)がある宇品島入り口では、昨年9月にキーウ(キエフ)から避難した姉妹が国旗を掲げた。姉(20)は「私たちはとても喜んでいる」と興奮気味に語り、その妹(19)も「ロシアの大統領と対話し、核兵器を使わないような道筋を探ってほしい」と期待を込めた。

 平和記念公園(中区)にも別のウクライナ人の母(59)と娘(35)が駆け付けた。「一目でいいから見たいと思って来た。どうか早く戦争を終結させてほしい」

 ゼレンスキー氏は早速、フランスや英国などの首脳と会談した。サミット最終日となる21日は会議に出席し、平和記念公園で原爆慰霊碑に献花する予定。公園では20日夕から、椅子の設置などの式典の準備が始まった。21日午後、岸田首相が議長国会見でサミットを締めくくった後、ゼレンスキー氏も訪れる見込みだ。

 「今日、平和がより近づくだろう」。広島到着後にツイッターにつづった言葉通り、和平への糸口をつかめるのか。被爆地に、世界の注目と祈りが集まる一日となる。

(2023年5月21日朝刊掲載)

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