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安全対策協議会の設置相次ぐ 島根原発30キロ圏1県5市 

民意集約「ガス抜きではダメ」の声も

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)30キロ圏の周辺1県5市で、原発稼働への意見を市民から聞く安全対策協議会(安対協)を設ける動きが相次いでいる。福島第1原発事故を踏まえ、避難に備えるエリアとなった1県5市。2014年度にも島根2号機の再稼働への意見を島根県に伝えるため、民意の集約方法を探る。市民からは「パフォーマンスの場に終わらせず真剣に民意と向き合って」との注文が上がっている。(樋口浩二)

 1県5市は、原発30キロ圏の自治体のうち立地する島根県と松江市を除く、出雲、雲南、安来、米子、境港市と鳥取県。昨年10、11月、稼働への意見を島根県に伝える覚書を県との間で交わしていた。

 いち早く今月10日、市議や市民団体、農商工団体の代表計33人で設置したのは安来市。「幅広く意見を聞く必要がある重要な問題」。松本城太郎統括危機管理監は意義を強調する。

 出雲、雲南市は9月までの設置を目指す。鳥取県と米子、境港市は「安対協の形にするかも含め、住民の意見を集約する場は必要」と今月、検討に入った。

 再稼働の前提となる2号機の安全審査は14年度にも終了する。1県5市はいずれも審査の了承と再稼働について島根県に意見を伝える考えで「審査結果を市民に説明し、判断してもらう場は不可欠」(雲南市危機管理室)とする。

 福島の事故以来、1県5市は事故のリスクを訴え、立地自治体と同等の発言権を中電に求めてきた。だが、中電は立地自治体への配慮などから拒み続ける。「周辺市を置き去りにしたままの再稼働に物申す意味でも、民意を丁寧にくみ取って中電に伝えたい」。出雲市の森山靖夫防災安全管理監は言う。

 一方、安対協には議決権がない。2号機の安全審査の申請可否が議題となった昨年12月の島根県安対協では、発言した委員11人のうち申請の了解を表明したのは2人にとどまったが、県は中電に了解を回答した。

 14日未明に起きた伊予灘を震源とする地震では原発が立つ松江市鹿島町でも震度3を観測した。「原発は危険と隣り合わせだとあらためて感じた」と雲南市の無職田中繁行さん(63)。「安対協の設置は一歩前進だが、単なる『ガス抜き』にならないよう、多様な市民の声と真剣に向き合ってほしい」と求めている。

<島根原発周辺1県5市による安全対策協議会設置の動き>

出雲市 9月までの設置目指す
雲南市 9月までの設置目指す
安来市 10日に設置
鳥取県 設置を検討
米子市 設置を検討
境港市 設置を検討

安全対策協議会
 島根原発の周辺住民が原発の安全性に関わる事柄について立地自治体や中電から説明を受け、議論する。全国の立地地域にも同様の組織がある。島根県と松江市(旧鹿島町)はそれぞれ、1号機の運転開始前年の1973年に設置。少なくとも年1回は開催している。

(2014年3月15日朝刊掲載)

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