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多様な課題 問われる日本 広島サミット閉幕

■編集委員 道面雅量

 21日閉幕した広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、「核なき世界」への道筋と並び、ゼレンスキー大統領の電撃的な来日でウクライナ支援にとりわけ関心が集中した。ただ、九つあったセッションの議題は多岐にわたり、首脳声明に盛り込んだ誓約はどれも、世界をリードする国としての重い責任を伴う。議長国日本はなおのこと、多様な課題に謙虚に向き合う姿勢が欠かせない。

 声明に「移民の人権や基本的自由を完全に尊重する」の項がある。難民認定率が極端に低く、入管施設での収容者の死亡が問題化しているのが日本の現状だ。社会的・文化的につくられた性差「ジェンダー」に基づく不平等の解消もうたわれた。日本は経済・政治分野で女性の参加が進まず、ジェンダー・ギャップ指数は世界116位(2022年)。G7で唯一、同性カップルへの制度的保障がない。

 「ミャンマー情勢への深い懸念」も声明に盛り込まれた。日本は欧米に比べ、ミャンマーの軍政に圧力をかけるのに消極的とされる。サミット期間中、在日ミャンマー人が広島市に集まり「ウクライナだけでなく関心を寄せ、助けてください」と声を上げた。

 G6による第1回サミットがフランスで開かれたのは1975年。高度経済成長を経た日本が、「自由と民主主義」陣営の先進国として欧米5カ国と肩を並べた晴れ舞台だった。出席した三木武夫首相は「歴史と伝統の異なる日本は異質な存在だが、同じ問題と悩みを有し、同じ手法で解決しようとする点では皆さんと変わらない」と述べ、存在感を示した。

 広島サミットでも、自由と民主主義の価値は重ねて強調された。それが社会の多様性や人権を保障する故にである。日本が先進国ならば、「異質」性のうちに閉じ込めて目をそらすことのできない課題が、突き付けられている。

(2023年5月22日朝刊掲載)

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