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[高瀬教授のサミットリポート] 次へ「宿題」 果たす責務

 異例ずくめでした。例年は最終日の昼には終わって正味2日間ですが、平和記念公園や宮島の訪問も含め3日間のフル活動。首脳宣言に盛り込んだ政策目標の数は多く、多岐にわたりました。サプライズもありました。海外の研究者との議論も踏まえて評価はA。歴史に残るサミットになりました。

 G7としては初の核軍縮文書「広島ビジョン」を、被爆地で発表できたことは特に評価しています。核保有国を含むG7を広島へ集めること自体、外交力を要します。「核なき世界」を目指す広島へ、世界の関心を引き込むインパクトを残したと言えます。

 耳目を集めたのはゼレンスキー大統領の来訪でした。一方で、議論の成果にも注目すべきです。気候変動やジェンダーといった重要課題での目標を定め、生成人工知能(AI)のルールをつくる「広島プロセス」を進めることで合意しました。

 国際社会で存在感を高め「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との議論も活発でした。ロシアが拒否権を持つ国連の機能低下が指摘される中、多様な国々が集い、多様なテーマについて意見交換できる「場」を提供しているのも、G7の重要な役割だと改めて実感しています。

 会議は終わりましたが、これは「始まり」です。ここで表明したことは、次のサミットを期限とする「宿題」です。岸田文雄首相は議長国のリーダーとして、約束を守る重責を果たさなければなりません。(名古屋外国語大教授、サミット研究者)=聞き手は奥田美奈子

(2023年5月22日朝刊掲載)

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