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[広島サミットを終えて] 厳戒の宇品島 日常戻る フェンスの撤去進む 目隠しシート剝がす 原爆資料館

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)の閉幕から一夜明けた22日、公式行事の舞台となった広島市南区元宇品町(宇品島)や中区の平和記念公園には日常が戻り始めた。警備用の設備の後片付けが進み、「サミット仕様」の光景から一変する中で、首脳たちが滞在した余韻も漂う。(堅次亮平、川上裕)

 主会場となったグランドプリンスホテル広島がある元宇品町。この日午前、ホテルからは資機材が慌ただしく運び出されていた。海からの立ち入りを阻むため沿岸に張られていたフェンスの撤去も始まり、そのそばをジョギングや散歩を楽しむ人たちが通り過ぎていった。

 山本勝己さん(67)=南区山城町=は2カ月ぶりに散歩に訪れた。「以前は毎週来ていたが、島に警察官が増えてから足が遠のいていた。穏やかな海と島が広がる元宇品からの風景はやはり格別。首脳も眺めを楽しんだだろう」

 島に通じる唯一の市道は21日夕まで6日間にわたり封鎖され、立ち入りは住民と関係者に限定されていた。住民は町内に入る際の「識別証」が不要になり、会社員西村久志さん(48)は「もう携帯しなくていいが、記念に飾っておく」と笑顔を見せた。

 厳重な警備の中、テイクアウト営業していた町内の焼き肉店には警察官や外務省職員とみられる客が頻繁に弁当を買いに来ていたという。山住祥人店長(43)は「20個くらいまとめ買いする警察官もいて、がっつりしたホルモン丼やネギタン丼が人気だった。寂しくなる」と話した。

 18日から21日夜まで立ち入りが制限された平和記念公園には、早朝から多くの観光客が詰めかけた。4日ぶりに再開した原爆資料館は東館の窓ガラスを覆っていた目隠し用の白いシートも外され、入館待ちの長い列ができた。佐賀県鳥栖市の岩坂常彦さん(76)は「まだ規制中で入れないかもと心配だった」と胸をなで下ろした。

 首脳たちが植樹した被爆桜の苗木も公開され、花で飾られた「G7」のモニュメントは記念撮影スポットに。公園一帯を囲んでいた高さ1・8メートルのフェンスは取り外しが進み、1週間ほどかけて公園は元通りになる見通しだ。

(2023年5月23日朝刊掲載)

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