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刺しゅうでつづる過酷な被爆体験 中区で天野さん作品展

 原爆や原発事故をテーマにした刺しゅう作家天野寛子さん(82)=東京=の作品展「爆と曝(ばく)」が23日、広島市中区上八丁堀のギャラリーGで始まった。新作は、広島で被爆した女性の証言を布地の上に1文字ずつ糸で描いた。柔らかな字体の文字を読み進めると、過酷な体験が胸に迫ってくる。28日まで。

 大小32点の刺しゅう画を出品。うち7点が原爆に関する作品で、同世代の友人で被爆者の大竹幾久子さん=米カリフォルニア州=が自身の母の被爆証言をまとめた著書を題材にした。「原爆が落とされた日」「被爆から三日」などと題し、打越町(現西区)の自宅で被爆して大けがを負った大竹さんの母の言葉を糸でつづる。幼子3人と火の海を必死に逃げたこと、夫が基町(現中区)で爆死したと知り、死も考えたこと…。炎をイメージした模様や広島の地図もあしらった。作品の前で足を止め、熱心に読み込む来場者が目立った。

 このほか福島第1原発事故をモチーフに手がけた作品もあり、被曝におびえる人々の心境などを伝えている。ロシアによるウクライナ侵攻への怒りを込めた作品もある。

 昭和女子大の名誉教授でもある天野さん。刺しゅう歴は40年に及ぶ。全国各地で個展を開いてきたが、広島での開催は初めて。「平和のために何かしたいと思いつつ何もできずにきた。一人一人の被爆者に思いを寄せてもらうきっかけになれば」と話す。入場無料。午前11時~午後6時(最終日は午後4時まで)。(田中美千子)

(2023年5月24日朝刊掲載)

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