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社説・コラム

天風録 『AI発、偽情報と偽画像』

 本当の、を意味する英語「リアル」は日本でもよく使う。さらに若者は「リアルガチ」とも。本気を示す「ガチ」を付けて「本当の本当」と強調しているようだ。真偽不明の情報がネット上にあふれる時代だから、こんな表現も必要なのか▲建物そばで黒煙が立ち上る画像だが、ウクライナではない。米国防総省付近で爆発―。そんな情報が先日、ツイッターを通じて世界中に拡散した。しかし地元消防局が打ち消す。「付近でそんな爆発は起きていない」▲まったくのニセ情報だった。人工知能(AI)を使い、捏造(ねつぞう)した画像のようだ。リアルに見えても、専門家によると、精度は高くなく、AIを使えばすぐに作れるレベルの画像らしい。それでも偽物とすぐ見抜ける人は少ないだろう▲米通信社を装った投稿でもあり、テロがガチで発生したと、大勢が感じたのだろう。混乱でニューヨーク株式市場の株価は一時、100ドル値を下げた。「AI画像が金融市場を動かした初の例かもしれない」との声も▲さまざまな面でAIは役に立つ。膨大なデータを学び進歩を続ける。だが悪用すれば本当らしいうそも流せる。規制を急がねばならない。リアルガチな話である。

(2023年5月25日朝刊掲載)

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