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ベアテ・シロタの生涯 一冊に 日本国憲法の男女平等条項を起草 アジミさんらが出版

 国連訓練調査研究所(ユニタール)の元広島事務所長で特別顧問のナスリーン・アジミさん(55)=広島市中区=が、日本国憲法の男女平等条項を起草した米国人女性の故ベアテ・シロタ・ゴードンさんについてつづった「ベアテ・シロタと日本国憲法 父と娘の物語」を出版した。

 アジミさんが、ゴードンさんと出会ったのは2002年。広島事務所を開設する準備の一つとして催した戦後復興に関する国際会議の報告書をまとめるため、序文の寄稿を依頼した。以来、ニューヨークの自宅を訪問したり電話で話したりして親交を深めたという。

 10年ごろ、ゴードンさんから、有名なピアニストで西洋音楽を日本に紹介したユダヤ人の亡父レオ・シロタさんと自身の人生について話したい、と聞き、「本を書きましょうか」と提案。翌11年1月にニューヨークを訪れ、レオさんの資料や、戦後ゴードンさんがアジアの文化を西洋に紹介した記録を見た。

 「ゴードンさんは、女性の権利に加え、人間の尊厳には文化が必要だと信じていた素晴らしい人」とアジミさん。特に女性の人権は、アフガニスタンやイランなど世界中で求められている普遍的な問題だと指摘する。「憲法、女性、平和、戦争、文化の力。今だからこそ読んでほしい」と話す。

 文化振興の部分は、立命館大のミッシェル・ワッセルマン教授(65)が担当した。A5判、72ページ。560円(税抜き)。フランス語版も出版されている。(二井理江)


ベアテ・シロタ・ゴードン
 1923年10月ウィーン生まれ。29年秋に両親と来日。高校卒業まで過ごし、39年8月に渡米。43年には戦時情報局に入り、対日プロパガンダ放送の台本書きや翻訳をした。雑誌「タイム」勤務を経て45年12月、連合国軍総司令部(GHQ)の一員として来日。民政局に配属され、日本国憲法草案の人権、特に女性の権利に関する条項を担当した。47年に米国に戻り、54年からニューヨークのジャパン・ソサエティ勤務。70~91年、アジア・ソサエティ舞台芸術部長を務めた。2012年12月、89歳で死去。

(2014年3月17日朝刊掲載)

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