×

連載・特集

満開の舞台へ 福山ばら祭2023 <中> 折りばら20周年

平和願う輪 世代超えて

歴史や折り方 英語でも

 今月上旬、福山暁の星女子中高(福山市西深津町)の教室。中学2年の生徒たちが、福山ばら祭(27、28日)の会場で配る「折りばら」をラッピングしていた。入れ物には手書きの一言メッセージを添える。坂田葵衣さん(14)は「平和」と記した。「戦争のない世の中であってほしいとの願いが広がれば」。ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえた。

 1945年の福山空襲からの復興を伝え、平和への願いを発信する「折りばら」。今年、取り組みが始まってから20周年を迎えた。実行委員会の折りばら部会は、会場の緑町公園(緑町)でその歴史を伝えるパネルを展示。折り紙と折り方などの英訳を付けたセット(200円)を販売する。

 折りばらが広がったきっかけこそ、2003年のばら祭のイベントだった。同年に米国主導のイラク戦争が勃発し、世界各地で反戦運動が拡大。福山青年会議所のまつり委員長として平和を願う企画を検討していた岡田晃尚さん(58)が、カナダ人の市職員が作った折り紙のバラを偶然見つけ、イベントを思いついた。

 同年のばら祭では2日間で延べ約千人が参加し約8千個を作った。祭りの後も全国各地から寄せられ、同年夏までに目標を大きく超える約5万個が集まった。平和記念公園(広島市中区)などに贈った。「一種の社会現象だった」と岡田さんは振り返る。

 同校では歴代の生徒たちが折りばらを受け継ぐ。06年度に授業で取り上げ、07年度からばら祭の会場で千個を配布。19年度からは折りばら作りを体験するブースで講師を担っている。

 今月には、同高3年の渡辺葵さん(17)と羽賀帆乃佳さん(17)が折りばらの歴史や折り方を英訳し、会場で販売されるセットを地元企業などと作った。「海外の人とともに平和への思いを新たにしたい」と渡辺さん。年内には英語で折り方を説明する動画も配信する予定だ。

 折りばらに込めた思いは若者に引き継がれ、世界に広げようとする取り組みが進む。岡田さんは「20年前と同様に国際情勢が見通せない今、平和について一人一人が考えてほしい」と願った。(原未緒)

(2023年5月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ