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[広島サミットを終えて] ウクライナ復興 願って歩む 戦禍の母国思い学び継続 広島の日本語講座再開

「家族で暮らせる日まで」

 ロシアによる侵攻から逃れてきたウクライナ人を対象に広島YMCA専門学校(広島市中区)が開いている日本語講座が24日、3カ月ぶりに再開した。その3日前、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ同国のゼレンスキー大統領が平和記念公園を訪問したばかり。受講者は停戦と帰国への望みをつなぎ、「頑張る」との思いを新たにしている。(新山京子)

 同校は昨年夏から今年2月まで講座を開講。長期化する避難生活の中で自立を模索する当事者を支えようと、日本財団(東京)の助成金を受けて再び開講にこぎつけた。この日は6人が2グループに分かれ、講師から日常会話でよく使うフレーズや文法を教わった。

 ゾリアナ・ヒブリチさん(20)は、2月から中区の飲食店で働く。接客は日本語。「周りが優しく接してくれる。もっと勉強して外資系のホテルで働きたい」。ドラハン・レーシャさん(30)は昨年10月から南区の印刷会社に勤務する。同僚とは翻訳アプリを使って会話しているが「もっとうまくコミュニケーションをとりたい」と力を込める。

 レーシャさんは、友人のつてで逃れてきた広島に1人で暮らす。ウクライナに残る弟は一時期、兵士として戦争の前線にいた。現在は大学進学により兵役を解かれたが、いつ戦地に戻されるか分からない。ゼレンスキー氏の訪問は「戦争を終わらせるためだと思い、うれしかった。家族で再び暮らせる日まで頑張る」。

 ヒブリチさんは21日、体調不良のため家で伏せっていたが、一緒に避難生活を送る母は居ても立ってもいられず平和記念公園を一望できる中区のおりづるタワーに駆けつけた。「私も行きたかった。ウクライナのことに世界の人がもう一度関心を持って」と願う。

 市によると、市内在住のウクライナからの避難者は15世帯24人。同校は、佐伯区と安佐南区でも近く日本語講座を開講する。いずれも来年2月までの予定だ。殿納隆義校長(62)は「生活に慣れてきたとはいえ不安は尽きないはず。できる限り支え続けたい」と話す。

(2023年5月25日朝刊掲載)

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