×

ニュース

岩国爆音訴訟で第一回口頭弁論 住民「負の遺産残せぬ」 国は争う構え

■記者 広田恭祥

 米海兵隊岩国基地(岩国市)周辺の住民476人が国に、米軍再編に伴う基地への空母艦載機移転や夜間飛行の差し止め、騒音被害に対する総額約5億5千万円の損倍賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、山口地裁岩国支部であり、原告3人が意見陳述して被害実態を訴えた。国側は全面的に争う構えを示した。

 原告団長の津田利明さん(63)は「爆音は前触れなく襲ってくる」と述べ、会話中断や睡眠妨害の被害を説明。「艦載機が移転されれば騒音や事故が増えると思い、市民が立ち上がった」と訴えた。津川朱美さん(65)も「我慢の限界。子や孫に負の遺産は残したくない」と強調。岩国、沖縄など全国の爆音訴訟で代理人を務める弁護士は弁論を展開した。

 原告は全員が、航空機騒音をめぐる過去の訴訟で損害賠償が認められているWECPNL(うるささ指数)75W以上の住宅防音工事対象地域に住む。訴状では、国による滑走路沖合移設は、騒音軽減などの当初目的に反して艦載機移転の受け皿となり、被害拡大は明らかと主張。国は爆音などで重大な侵害を続け、受忍限度を超える精神的、身体的な被害を周辺住民に与えたとしている。

 その上で、自衛隊機を含め午後8時~翌朝8時の飛行とエンジン差し止め▽市街地上空での旋回や急上昇訓練差し止め▽艦載機の移転差し止め▽過去と将来の損害賠償―などを求めている。

 国側は答弁書で「艦載機移転に伴う関連措置や沖合移設により、騒音は現状より軽減されると予測され、安全性も今以上に確保される」と反論。艦載機の離着陸を含む米軍機飛行差し止めは「国の支配が及ばない」とし、騒音などの影響は「受忍限度内」と請求の棄却を求め、自衛隊機の飛行差し止めと将来の被害補償は判例を挙げて却下を求めている。

WECPNL(うるささ指数、W値)
 航空機騒音が生活に与える影響を評価する国際基準。飛行回数や時間帯を加味して平均値を求める。国は、W値75以上区域を住宅防音工事の対象としている。岩国基地周辺の同区域は約1640ヘクタール。国は、米空母艦載機が移転しても滑走路を約1キロ沖に移す移設事業によって500ヘクタールに減ると予測。一方、W値70以上区域は主に海域で広がる。

(2009年7月10日朝刊掲載)

関連記事
米艦載機離着陸訓練 候補地選定進まず 岩国180キロ圏(09年6月29日)
岩国基地騒音 周辺住民が初の提訴 艦載機移転差し止めも(09年3月28日)
原子力空母 配備後初の日米演習 (08年11月18日)

年別アーカイブ