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復元工事の完了 半年間延期 旧日銀広島支店 状態良い壁など現状保存に変更

 被爆建物の旧日本銀行広島支店(広島市中区)の復元工事が9月まで半年延びたことが29日、分かった。3月に終わる予定だったが、状態の良い壁や天井のしっくいを現状保存する方針に変更した影響という。1950年代の姿に戻し、国の重要文化財への指定を目指す。

 市は2022年3月に復元工事に着手。壁や天井のしっくいを剝がす予定だったが保存状態が良く、そのまま残して文化財としての価値を高めることにした。しっくいの落下防止のために、天井などを布で覆って補強する。総事業費を3億2500万円と見込んでいるが、工期の延長に伴い、費用の変更の必要性を今後検討するという。

 旧日銀広島支店は市重要文化財。壁には被爆時にガラスが刺さった跡などが残る。これらを保存するほか、プラスチックタイル張りの1階床を別の素材に張り替えるなどして、被爆からの復旧工事後の50年代の姿を再現する。天井板は取り外し、床板やはりが見えるようにするという。

 復元工事を巡っては、建設業の人手不足などから施工業者を決める入札が4度不調となり、当初予定した17年度から約5年遅れで始まった。市文化振興課は「被爆の実態を伝える建物として、多くの人が訪れ、平和の尊さを体感してもらえるようにしたい」としている。(宮野史康)

旧日本銀行広島支店
 1936年完成で鉄筋3階地下1階建て延べ3214平方メートル。ギリシャ風の装飾彫刻などの古典様式が特徴。爆心地の南東380メートルにあり、原爆で窓枠や欄干が吹き飛ばされ内部も大破した。広島市によると、建物内では職員18人が被爆し、8人が亡くなった。2000年に市重要文化財。市は日銀から無償で貸与を受け、市民の文化、芸術活動の場として使っている。

(2023年5月30日朝刊掲載)

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