×

社説・コラム

『記者縦横』 G7 宮島に残したもの

■西広島支局 八百村耕平

 受け取った映像から島の興奮が伝わってきた。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の舞台となった廿日市市の宮島。G7首脳たちが訪れた5月19日には多くの島民が海岸通りなどに詰めかけ、車列にカメラを向け、手を振ったという。

 「という」と伝聞調で書いたのは、私自身は島に渡れなかったからだ。サミット開催に合わせて3日間、島は住民たち以外の立ち入りが規制された。当日の島の様子を知るため、複数の知り合いにお願いして動画や写真を送ってもらった。もどかしい取材だった。

 サミットが宮島にもたらしたものは何だろうか。入島規制の影響で観光業は少なからずダメージを受けたが、長期的に見れば外国人観光客が増えていくのは間違いないだろう。サミットは海外メディアでも報じられた。大鳥居の前で中継放送をしたイタリアのテレビ局キャスターは「ミヤジマの名は世界に知れ渡り、大鳥居は日本のシンボルとなった」と力説していた。

 一方、施設の受け入れ能力を超える観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」が島の観光の懸念材料となってきている。サミットの恩恵をどのような形で生かしていくかは今後の課題だろう。

 桟橋で首脳を出迎えた宮島小の児童には、感極まって泣いた子もいたという。「成長したときにすごい経験をしたと振り返るはず」と同小の校長は語る。島民に大きな誇りを与えてくれたことも歴史的な会合の成果だと感じている。

(2023年6月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ