[広島サミットを終えて] 優しさに触れ、一同感激する日々 漁協に感謝 置き手紙
23年6月2日
南区 警備の海保「丹那班」
「皆さまの優しさに触れ、班員一同、感激する日々でした」。1通の手紙が広島市南区丹那町の大河漁協に残されていた。差出人は市内であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)で丹那町を拠点に警備に当たった「海上保安庁丹那班」。便箋代わりにノートをちぎり、休憩場所やお茶を提供した組合員への感謝の言葉を連ねている。(鈴木愛理)
書かれたのはサミット最終日の5月21日夜。「直接お礼に伺うべきところではありますが、急な指示によりこの場を離れることになりました」。手紙は予定より早く任務が解かれた事情に触れ、警備に協力した漁協や関係者へのお礼を述べた上で「平和な海を守ることで、恩返しとさせていただきたい」とつづる。漁協事務所の屋外テーブルに置かれているのを22日朝、事務員が見つけた。
同班が拠点とした丹那町はサミット主会場となったグランドプリンスホテル広島のある元宇品町(宇品島)の北東約2キロにある。漁協によると、長崎や佐賀県から十数人の海上保安官が配置され、船だまりに出入港する船をチェックして無線で海上の保安ボートに伝えるなど24時間態勢で警備していたという。
同班はサミット開始(19日)の数日前から警備に当たった。その初日、漁協組合員たちは「暑さをしのいでもらおう」と保安官たちが待機する護岸にテントとベンチを設置。冷えたお茶も毎日差し出した。「受け取れない」と断られながらも、日々のあいさつや道案内を通じて徐々に打ち解けていったという。
「聞き慣れない九州の方言に温かみを感じた。最後に顔を合わせ、労をねぎらいたかった」。手紙を見つけた漁協事務員の早稲田静代さん(71)は名残を惜しみつつ「心がこもった手紙を残してくれて組合員たちもみんな喜んでいる」と頰を緩める。
(2023年6月2日朝刊掲載)