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核軍縮の文言後退 サミットは期待外れ ICANのホグスタ暫定事務局長

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ、広島市を訪れた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のダニエル・ホグスタ暫定事務局長が中国新聞のインタビューに応じた。初の被爆地開催に注目していただけに、核軍縮を巡る議論の成果は「期待外れだ」と指摘した。(小林可奈)

  ―広島で開催した意義をどう捉えますか。
 複雑な思いがある。私たちは世界のリーダーが広島を訪れるよう求めてきた。サミットには原爆資料館(中区)の訪問や被爆者との面会が盛り込まれ、核兵器のもたらす惨状を知る好機だったが首脳たちはどこまで理解できただろうか。

 発表された文書は、核兵器使用の脅しの文言を巡り「許されない」とした(昨年11月の)20カ国・地域首脳会議(G20サミット)から後退した。ロシア非難に終始し、核兵器を保有、共有する自分たちのことは棚上げしている。核兵器を巡り、世界の現状は極めて危険だが、G7首脳は世界が求めるリーダーシップを発揮できなかった。

  ―ウクライナの大統領も参加しました。
 訪問の善しあしは分からない。ただ、ゼレンスキー大統領は資料館にも訪れ、原爆慰霊碑に献花する姿は心に強く訴えるものがあった。ロシアの核兵器の影の下に生きるウクライナの人々にとって、何が脅威かを明確にできただろう。

  ―今年は核兵器禁止条約の第2回締約国会議がありますね。
 世界各国の国会議員や若者を巻き込んだ活動に継続して取り組みたい。開催地の米ニューヨークは金融部門の世界的な拠点のひとつ。核兵器への投融資の抑制に向けた活動もする。

  ―被爆地の役割とは。
 被爆者の強い声がなければ禁止条約は存在しなかっただろう。広島と長崎からのメッセージなくして、核軍縮の前進は難しい。ICANの活動には必要不可欠で常に中心に据えていく。

 1987年、スウェーデン出身。2012年にICANに加わり、キャンペーン・コーディネーターなどを歴任した。ベアトリス・フィン前事務局長の退任に伴い2月から現職。

(2023年6月5日朝刊掲載)

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