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連載・特集

空の下躍動 2023ひろしまフラワーフェスティバル <4> 日韓交流 深まる舞台

 広島韓国会館(広島市東区)の一室に、勇壮な太鼓の音が響く。在日本大韓民国民団(民団)県地方本部のメンバーが韓国伝統の打楽器チャンゴの稽古に汗を流していた。体の芯まで響く音とともに、目を引くのは素早いばちさばき。フラワーフェスティバル(FF)のパレードでは平和大通り(中区)を歩きながらその腕前を披露する。

 「4年ぶりのFFを楽しみたい」。チャンゴ奏者の鄭慎二(チョン・シニ)さん(46)=府中町=の表情は明るい。祖父母が生まれた韓国に渡り、17年間でさまざまな伝統楽器の演奏を身に付けた経験を持つ。帰国後、全国での演奏会に出演しながら指導にも当たり、2013年から19年まで生徒たちとFFに参加してきた。

 そのたびに拍手や声援に沸く沿道との一体感や、パレードやステージの多様さに触れてきた。「異なる文化が垣根なく結ばれる舞台」と張り切る。

 パレードには民団県地方本部から過去最多の約150人が参加する見通し。19年より5割ほど増える。チャンゴを含む四つの打楽器による音楽「サムルノリ」の音色に乗り、色鮮やかな伝統衣装チマ・チョゴリをまとう女性たちが通りを練り歩く。駐広島韓国総領事館による朝鮮通信使を再現する約100人の行列も続く。

 部活動で韓国文化に触れる広島女学院中高(中区)の生徒9人も参加する。中学のハングル部部長で3年磯部成李(しおり)さん(14)はチャンゴの演奏に加わる。「参加者に韓国語を教えてもらったり、楽器について詳しく聞いてみたりしたい」と本番を楽しみにしている。

 先月、市内で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の拡大会合に出席した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は平和記念公園(中区)を訪れ、韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花した。韓国の現職大統領が慰霊碑を訪れたのは初めて。国際交流の種をまき続けてきた民団県地方本部事務局長の文晶愛(ムン・ジョンエ)さんは「日韓の親善がより深まっていくと確信した。FFで生まれた交流の輪を若い世代につないでいきたい」と力を込める。(向井千夏)

 民団県地方本部は10日午前11時からの「花の総合パレード」に出演。同日午後4時半からすみれステージでサムルノリの演奏もある。

(2023年6月6日朝刊掲載)

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