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「移民県」広島に博物館を 地元有志が始動 歩み伝承 9日学習会

 全国一の「移民県」と呼ばれた広島に移民博物館をつくろうと、地元有志が活動を本格化させている。広島市が1980年代に国内外で収集した関連資料を生かし、苦難の歩みを伝えたいという。9日に中区で開く学習会の参加者を募っている。

 親戚に移民がいる人や研究者たち約10人で「移民ミュージアムを実現させる会」(仮称)として昨年から活動を本格化させた。学習会を重ねる傍ら、市や県への働きかけも進めている。

 着目するのは市が80年代に4度、職員を北南米に派遣するなどして集めた資料群だ。戦前の農具や写真、日本の家族と交わした手紙など8477点に上る。

 市は当時、放射線影響研究所(放影研、南区)移転後の跡地に博物館を造る構想を描いていた。その後、移転計画の停滞や市の財政難を受けて凍結。現在は、放影研跡地に「平和の丘」としてイベント広場などを設ける別の構想を打ち出している。資料は2019年から一部を旧日本銀行広島支店(中区)で常設展示するが、大部分は市内2カ所の所蔵庫に眠っている。

 有志の1人で、戦前のカナダに渡った大叔母がいる田中勝邦さん(79)=西区=は「広島の近代史に移民の歩みは欠かせない。もっと知られていい」と話す。国際協力機構(JICA)横浜海外移住資料館の統計では、広島からの移民は戦前と戦後を合わせて10万9893人と全国で最も多い。

 田中さんの大叔母は第2次世界大戦が始まると、現地の強制収容所に入れられた。田中さんは「先の大戦では二つの祖国の間で辛酸をなめた人が多い。平和を考える上でも、日系移民史に光を当てたい」と語る。

 学習会は9日午後2時から、中区東千田町のクリップ広島で。元中国新聞記者の西本雅実さんを講師に招く。オンライン参加もできる。問い合わせはメールで。tkats1943@gmail.com(田中美千子)

(2023年6月7日朝刊掲載)

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