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連載・特集

緑地帯 細井謙一 お好み焼きが紡ぐもの②

 G7広島サミットでがぜん注目度が高まったお好み焼きだが、そのバリエーションは実に豊富である。比較的標準的なレシピのお店でも、細かい点でさまざまな違いがある。麺だけみても、生麺、茹(ゆ)で麺(製麺所で下茹でして出荷されるもの)、蒸し麺と3種類あり、それぞれに持ち味が違う。全粒粉麺、脱脂胚芽麺、卵麺など素材の違い、太麺、細麺、ちぢれ麺など加工方法の違いでも味わいが大きく変わる。それぞれの持ち味をどう引き出すかも各店の腕の見せどころ。魚粉や出汁(だし)で味わいを加えたり、一本一本しっかり焼いて香ばしさを出したり、揚げ焼きにする麺パリと呼ばれる調理法も人気だ。

 ほかにも、キャベツ、豚肉、もやし、天かす、青のり、ソースなど、基本素材への各店のこだわりは驚くばかり。オーソドックスな肉玉そば一つとっても、これらのこだわりの積み重ねで、驚くほどのバリエーションがある。

 ニュータイプのお好み焼きともなれば、生クリーム、ホワイトソース、カレー、ステーキがのったお好み焼きまで現れている。変わったものをのせればいいという単純な話ではなく、例えばステーキをのせるなら、それに合うようにソースに赤ワインをブレンドするなど、お好み焼き全体の完成度が高いのも、ニュータイプの特徴だ。

 結局こうしたバリエーションは、広島県内1300店、広島市内だけでも900店弱といわれる多くのお好み焼き店の差別化競争の結果だろう。そして同時に、お客さまに喜んでもらおうという店の愛情と努力の賜物(たまもの)でもある。(広島経済大教授=広島市)

(2023年6月8日朝刊掲載)

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