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社説・コラム

社説 ひろしまFFあす開幕 平和のパワー 発信しよう

 躍動感あふれるパレードが戻ってくる。46回目となるひろしまフラワーフェスティバル(FF)が、広島市中区の平和記念公園や平和大通り一帯であす、開幕する。

 市内などで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)に配慮し、5月の大型連休を避けて初めて6月に開催。例年より1日短いが、濃密な2日間となる。新型コロナウイルス禍を乗り越え、4年ぶりに通常の開催にこぎ着けたことを喜びたい。

 パレードは、日にちを分けていた「花の総合パレード」と「きんさいYOSAKOI」を初日に一気に繰り広げる。東からの花の総合パレードに続き、西からYOSAKOI踊りが連なる。終点の平和記念公園にどんな景色が広がるか楽しみだ。

 FFは1977年、「平和の尊さと喜びを市民が分かち合える祭りを定着させよう」と始まった。その2年前に行われた広島東洋カープ初優勝のパレードも後押しになった。全国有数のイベントに育ったが2020年、コロナの影響で初めて中止に追い込まれ、21、22年も縮小を余儀なくされた。

 学校や地域でも発表の場を奪われ、解散に追い込まれた常連グループもあったようだ。それだけに、広島最大のパレード復活を喜ぶ声は多い。沿道などに設けるステージにも、参加申し込みが殺到した。

 広島修道大協創中・高(西区)バトン部は、卒業生を集めて演技を披露する機会を設けて経験不足を補い、前身の鈴峯女子中・高時代から28回目の参加をかなえた。海田高(広島県海田町)マンドリン部はコロナ禍で停滞した活動を盛り返そうと初めてエントリーした。

 今年のテーマは「Power of Flowers~ここで咲く花 世界にとどけ~」。仲間と歌い、奏で、踊る喜びをかみしめ、3年分のパワーを大いに発散してほしい。

 G7サミットで高まった広島の知名度や発信力を、祭りの盛り上がりにつなげたい。平和記念公園に首脳たちが集ったのはほんの3週間前。そろって原爆慰霊碑に献花し、原爆資料館を訪れた様子は鮮明に浮かぶ。外国人観光客はサミット後に一層増えたのではないか。パレードやステージの熱気に、平和の尊さを実感するはずだ。

 多様性もFFの魅力である。在日本大韓民国民団広島県地方本部は過去最多の参加者が伝統音楽に乗って練り歩き、友好を呼びかける。初参加の広島県セクシュアルマイノリティ協会はLGBTなど性的少数者への理解を訴える。7月に発生から5年となる西日本豪雨の被災地の子どもたちも躍動する。

 スペシャルゲストで呉市音戸町出身の歌手島谷ひとみさんのステージも見逃せない。2日目の「ひろしまストリート陸上プラス」では、広島市出身で元陸上選手の為末大さんや元体操選手の内村航平さんら世界で活躍したアスリートが登場する。平和大通りでどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。

 長かった巣ごもり生活を経て、開催を心待ちにしているのは参加者だけではないはず。パレードやステージで生き生きと輝く姿を見て、訪れた人たちの表情も華やぐ。そんなFFの醍醐味(だいごみ)をともに味わい、笑顔を発信しよう。

(2023年6月9日朝刊掲載)

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